『中東国際関係史研究』を読み解く
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ローザンヌ条約がトルコにもたらした大きな成果
『中東国際関係史研究』を読み解く(3)知られざるカラベキルの生涯と功績
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
卓越した外交、軍事の才を持つっていたがために、ケマル・パシャからライバル視され、政治的失脚に追い込まれたキャーズィム・カラベキル。しかし、彼はその不遇の時代も豊かな文化人的資質をもってトルコの発展に寄与した。山内昌之氏が、キャーズィム・カラベキルの後半の生涯と豊かな人間性について語る。(全3話中第3話目)
時間:18分25秒
収録日:2014年6月18日
追加日:2014年7月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローザンヌ講和会議でのイスメト・イノニュの「交渉なき外交」


 前回まででお話ししましたように、イギリス、フランスなどの列強を相手とした民族運動において、ケマル・パシャ、すなわちアタテュルクがギリシャとの西部戦線を主導し、カラベキルは東部戦線を担当しました。 アタテュルクは、ギリシャを1922年の暮れにアナトリアから駆逐することに成功します。そして、その成果に立って、1922年から1923年にローザンヌで講和会議を開きます。

 ローザンヌの講和会議には、アタテュルクは彼の盟友であり、そしてカラベキルとは陸軍士官学校以来の友人であった、イスメト・パシャという人物、これは後のトルコ共和国2代目の大統領であるイスメト・イノニュのことですが、このイノニュとなる人物をローザンヌに派遣します。

 イノニュという人物は、非常に不器用な人物でした。ケマル・パシャもイスメト・パシャも、カラベキルのような繊細な外交感覚、あるいは語学力、あるいは教養というような点においては、いずれもカラベキルにはかなわなかったのです。イスメトは特にそうだったわけですが。イノニュは不得意な言葉、外国語でなかなか苦戦します。というのも、イギリスは全権大使としてカーゾン外務大臣が出てくるわけですから。このカーゾンは、インド帝国のバイスロイ、つまり副王も務め、そして、本国イギリスにおいては外相をずっと務めていた、こういう名うての植民地帝国の経営者でした。このカーゾンが出てくる外交会議、講和会議です。そこにイスメトが出かけていく、これだけでも不思議な絵になるのです。

 さて、カーゾンはどうしたか。あるいは、イスメトはどうしたか。カーゾンは、弁舌豊かにいろいろと、説得していく。敗戦国に対して、講和というのはこうあるべきものということを説いていく。

 イスメトはどう対応したかというと、次の二つのようなことをしました。一つは、ケマル・パシャから受けた訓令を、一字一句も逃さずそこから逸脱しないようにした。ですから、交渉ではないのですね。自分はそこから絶対譲らない、ということを何回も繰り返すだけです。

 そして、2回目はそれでも不都合になると、彼は聞こえないふりをしたのです。何回も聞き直したり、聞こえないふりをする。実際に彼は耳が遠かった部分もあるようではありますが、聴力にさながら障害があるようにして...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
米国派経済学の礎…ハミルトンとクレイ(1)ハミルトンの経済プログラム
フェデラリスト・ハミルトンの経済プログラム「4つの柱」
東秀敏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)下請けから世界の中心へ
インドが世界有数のIT産業の拠点へと発展した理由
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(2)開国の是非と将軍継嗣問題
「尊王攘夷か佐幕か」…天皇絶対主義に結びつく厄介な問題
山内昌之
資本主義の再定義…哲学で考える(6)「学ぶ」ことの本質と道徳の問題
「一人で悟るのは危険だ」…学ぶことの本質と日本の役割とは?
中島隆博
組織心理学~「妬み」との上手な付き合い方(1)いい妬み・悪い妬み
いい妬みと悪い妬みの2種類がある…「嫉妬」の本質に迫る
山浦一保
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(3)稲作社会と頑張る日本人
ダメなのは「頑張りが足らない」から…うつを招く稲作的発想
與那覇潤
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博