『中東国際関係史研究』を読み解く
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「方法」と「人物」から中東国際関係史を理解する
『中東国際関係史研究』を読み解く(1)本書の目指した二つの目的
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
山内昌之氏の近著『中東国際関係史研究』が話題になっている。2段組み800ページを超える重厚な学術書であるにもかかわらず、半年で4刷を重ねる異例の早さだ。40年来の研究の結実成果をいかに読むべきか。著者自身が、3回にわたりナビゲーションを務めてくれる。(全3話中第1話目)
時間:18分02秒
収録日:2014年6月18日
追加日:2014年7月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●「中東」という広大な世界の名を持つ本


 皆さん、こんにちは。

 本日は、私自身の仕事について語ることをお許しください。

 私の書いた『中東国際関係史研究』について、いろいろな友人や知人から「購入して読んでいる最中だ」「贈られたが、まだ読んでいない」、あるいは非常に好意的に「読んでいるけれども、どうも自分が理解できない部分がある」等々の声が寄せられています。ありがたいことに、いずれの方々も私の仕事に対して好意を寄せてくださり、同時に励ましの言葉もくださるのです。

 そこで今日は、そういう方々のご希望ないし著者へのリクエストに答える形で、この本の内容、あるいは著者は何を語りたかったのかという志などについて、あまり肩がこらないように、お話ししてみたいと思います。

 まず、この書物は『中東国際関係史研究』という大きなタイトルを持っています。

 もとより中東とは、東はおおよそアフガニスタンやイランから、西はモロッコやアルジェリアまでの広い範囲を指します。考えてみると、これはインド洋から紅海、地中海、太平洋につながっていく広大な世界です。内海で言うと、カスピ海や黒海までが含まれます。概略で申し上げても、北はイスタンブールから南はスーダンのハルトゥームまで。東は海に面したバスラやオマーンのマスカットから、西はモロッコのファースやあるいはタンジールまで。

 私は、このような広大な地域についての歴史や国際関係を一つの本でまとめるというような、大それたことを考えたわけではありません。


●現代の中東問題の源には、二つの帝国の崩壊がある


 何事においても、物事を理解するときには構図をつかまえることが大事です。特に歴史においては、ある一定の限られた地域と時間をピックアップして、問題を整理するという手法が採られます。

 私は現代の中東の複雑さ、すなわちウクライナの問題やグルジアとロシアの対立関係・戦争などを展望できる時間と空間を探しました。

 イラクでは今、事実上の内戦が勃発しており、スンニ派武装勢力に占領された地域としてモースルの名が出ています。この地域はオスマン帝国の領土にあり、1923年のローザンヌ条約締結以降イラクに帰属(イギリスが領有)しましたが、それをトルコが認めるまでには紆余曲折がありました。これは現在のイラク情勢を考える上で極めて大事な点です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏