●アメリカの中西部では平均寿命が短くなっている
今日は、トランプ政権が進めている保護主義的な政策について、最近感じたことをお話しさせていただきたいと思います。
少し前に、アメリカのシカゴに行く機会がありました。地元で経済界あるいは学者の方々といろいろお話ししたので、その時のことをお伝えします。
われわれが通常アメリカのさまざまな話を聞くルートというのは、ワシントンの政界筋とか、東海岸や西海岸の経済界の方とか、あるいはそれに関わるジャーナリストの方々の声が多いのですが、中西部の実態を聞いてみると、随分やはり雰囲気が違うのかなという感じがします。
今回シカゴでいろんな方と話を聞いて非常に印象に残ったのは、何人かが地域の住民の平均寿命がアメリカでは短くなっているということを強調した点です(もちろんアメリカ全体で見てもそういう傾向が若干見られるようなのですが)。特に「ラストベルト」といわれているようなオハイオ、ペンシルバニア、ミシガン、あるいはそれに関わるような中西部のイリノイとか、そういう地域で見ると、この30年あるいは50年といってもいいかもしれませんが、海外からの輸出が急速に増えることによって、地域が非常に衰退していった状況がよく分かるわけです。
平均寿命が下がるというのはどういうことかというと、人々の生活が破壊されてきているということで、仕事がなくなるだけではなく、生活が非常に苦しくなる中で、犯罪やドラッグがまん延することもあるでしょうし、社会保障に依存する人も増えてくるでしょう。という中で、健康状態も非常に悪化していくということです。
●莫大な社会的なコストが輸入増加によって引き起こされている
こういう視点で見ると、海外から輸入品が増えるということは何にもうれしくありません。さらにいえば、ラストベルトという、前回の大統領選でトランプ氏の勝利に非常に大きな貢献をしたといわれている地域は、かつては鉄鋼や自動車、機械などアメリカの中核企業をたくさん地域に抱えており、ある意味で非常に栄えた地域だったと思います。
それが、当初のヨーロッパ、日本、その後は中国ということで、海外から次々と輸入が入る形で、鉄鋼や機械、自動車という産業が次々と衰退していったわけです。NAFTA(北米自由貿易協定)によって、アメリカの企業自身もメキシコなどに拠点を動か...