人類学と「人種差別」
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
全人種をホモ・サピエンスと分類したリンネは画期的だが…
人類学と「人種差別」(1)キリスト教世界観と人類学
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
人類学が「人種」というものをどう定義し、扱ってきたかという経緯を解説するシリーズレクチャー。人類学の背景にはキリスト教世界観があるため、生物は神の下、「自然の梯子」の序列の中に置かれ、さまざまな人種についても多様性より優劣で捉えられていた。18世紀、リンネの分類体系でようやく人種全てを「ホモ・サピエンス」と認識されるようになる。このリンネの定義は人類学史上、画期的なものだったが、亜種の記述にはいろいろな偏見が入り混じっていた。(全3話中第1話)
時間:10分14秒
収録日:2019年3月4日
追加日:2019年6月25日
≪全文≫

●人類学が抱える過去の負の遺産


 長谷川眞理子です。今回は、私の出身学部といいますか、研究科が自然人類学なので、その人類学に関する過去の負の遺産ということに関して、今考えていることをお話したいと思いました。

 人類学と人種差別ということなのですが、人種という概念は非常に議論が多いところです。人類学ではいろいろと定義されていて、いわゆる人種というものは存在しないということになっています。ですが、人がいろいろ違った形をしていたり、文化が違ったり、肌が違う色をしていたりというようなことに関する話というのは、人類学の本当の基になっています。

 ですから、その辺りの過去の経緯が今にどう影響しているかということを、人類学者の責任として考えておかなければいけないと思い、お話しすることにしました。


●人間の多様性の認識よりキリスト教的世界観による序列


 人類学が最初にできてきたのは、もちろん西欧の科学の中からですから、西欧、つまりキリスト教世界がどのように人間というものを見ていたかということを知っておかなければいけません。

 そのキリスト教世界観における生き物の扱いは梯子のようになっています。一番偉いのが神様、その次が天使、次が人間、動物、その下が植物ということで、これはスカラナチュレ、「自然の梯子」ということになっています。つまり序列のことで、いろいろなものが並列であるといっているのではなく、優劣がある、序列があるといっているわけです。そして、これは神様が全てを創ったとする創造説ということになります。

 キリスト教世界の中で人種というものがどう捉えられてきたかというと、ヨーロッパは地中海を経てアフリカと続いていますので、黒人という存在はよく知られていました。ところが、大航海時代とかコロンブスのアメリカ発見などという時代になり、もっといろいろ世界中を回るようになります。

 その後、世界中を探検した結果、いわゆる聖書に書かれていない人間たちが発見されるわけですね。例えば、「アメリカ・インディアン」と呼ばれる人たちなどというのは聖書に記述がありません。彼らは、そのような初めてヨーロッパ人が見た人々が本当に人間かどうかという議論をします。その時に、先ほどの「自然の梯子」の中でどう位置...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
もっと知りたいイヌのこと(1)イヌの歴史を振り返る
オオカミはいつイヌになったか…犬の起源と家畜化の歴史
長谷川眞理子
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(4)新規事業成功のポイント
新規ビジネスの立ち上げ方、伸ばし方、見切り方の具体例
水野道訓
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
AI時代と人間の再定義(6)道徳の起源から考えるAIと感情の問題
道徳の起源は理性か感情か?…AI時代に必要な思考の身体性
中島隆博
プロジェクトマネジメントの基本(10)大脳生理学によるモチベーション理論
論理的?計画的?社交的?冒険的?利き脳による4タイプ
大塚有希子