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金正恩体制の存続問題こそが決定的な「核心」だ

国際情勢における日本の安全保障(3)朝鮮半島の複雑性

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
概要・テキスト
金正恩政権へのクーデターの危機が高まっているとすると、それに対して金正恩はどのような手を採りうるか。客観的にみれば、中国の影をちらつかせつつ、場合によっては「アメリカの属国化」という選択肢も視野に入れて交渉するのがもっとも現実的であろう。だが、一方で現在、中国の影は、むしろ韓国のほうで色濃くなりつつある。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:07:47
収録日:2019/06/28
追加日:2019/09/11
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≪全文≫

●アメリカのクーデター援助に金正恩はどう対抗できるのか


―― 金漢率(キム・ハンソル)がアメリカの国内に、いま、いるのではないかともいわれますし、まさに先生がおっしゃったようにクーデターの可能性というものが非常に高まっているなかで、逆にいうと、金正恩からすると、そのクーデターの危機にずっとおびえながら政権運営をしていかなければいけない。だいぶ乱暴に粛清もやってきましたし、いつそういうことが起きてもおかしくない状況を金正恩自体が、北朝鮮国内でやっているところもあり、これは彼の立場からすると、前にも後ろにもいけないという、かなり追い詰められた状況になっているようには思いますけれども、そのためにも、いま先生がおっしゃった第3の道というのは、締め上げるにせよ、どうするにせよ、かなり大きな手になりますね。ここで逆に、金正恩の立場になった場合に、採れる手というのはどこにあるのでしょうか。

中西 やはりまずは、アメリカの手を緩めさせることでしょうが、アメリカはそう簡単に緩めません。あるいは自力更生というか、自分の力で経済的に食っていける体制をつくりたいと思っていたのでしょうが、しかしアメリカに制裁されているかぎり、それもできません。おそらく客観的に考えて、「アメリカの属国になりますから、体制を認めてくれ」というような裏交渉を、一生懸命、トランプ政権と行おうと思っているのではないかと、私は考えます。つまり、北朝鮮にとって一番有利なのは、中国との関係でも、「アメリカが北朝鮮をアメリカの勢力圏として、友好国として(俗に言う「属国」ですが)遇してくれるなら、自分たちは核兵器も一切持たず、完全にこの勝負で降りてしまう」ということでしょう。そのときには、恐らく金正恩は海外亡命の約束を取り付けるでしょう。彼は年若いので、どこへ逃げてもなかなか生き延びられないと思いますが。なにせ敵が多すぎます。かといって徹底抗戦をして、国土を灰燼(かいじん)に帰するほどの度胸でアメリカと対するかというと、そうではないでしょう。ですから、展望なく時間を引き延ばしていくことしか、彼には選択肢はないのではないでしょうか。当面は、2020年のアメリカの選挙を睨んで(にらんで)いるのだと思います。

 ですから、アメリカを中心に関係国の周りで、どうも転覆工作の空気が強まっているというのが、一番の圧力になっているの...
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