「イスラム国」米イラク空爆~六つの背景とシリア情勢への対応~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
次の目標は中東におけるアメリカ最大の同盟国
「イスラム国」米イラク空爆~六つの背景とシリア情勢への対応~(前編)
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イスラム国に対する米軍のイラク空爆開始からはや1カ月、事態は長期化の様相も呈し、出口が見えない。米欧、特にアメリカが軍事攻撃に打って出た六つの背景と、シリア情勢への対応について、山内昌之氏が鋭く分析する。(前編)
時間:15分46秒
収録日:2014年9月18日
追加日:2014年9月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●欧米、特に米国はなぜ「イスラム国」への軍事攻撃に打って出たのか


 皆さん、こんにちは。

 最近、日本でも「イスラム国」という名を聞く機会が多くなりました。イスラム国とは、中東のシリアとイラクにまたがるテロリズムの集団であり、かつ、国家です。従来の国民国家の範囲を超えて、中東にジハディズム、すなわち、イスラム聖戦という名目の下にテロ的手段を使ってイスラム共同体をつくろうとしています。主観的にはそのように彼らは主張をしておりますが、その実はすこぶるゆがみ、そして、イスラム的に見ても、ある部分が非常に極端に誇張された犯罪の集団であるということが、最近ますますあらわになっています。

 こうしたイスラム国に対して、オバマ大統領は、ヨーロッパとの協力の下、また、ロシアの理解を求めながら、体系的にイスラム国の力を奪うことや、彼らが今支配しているシリアとイラクの地域を減らしていくこと、そして最終的には、そうしたイスラム国というテロの集団を打ち破ることを宣言しました。

 このイスラム国という不思議な名前を持っている集団は、もともと「イラクとシリアのイスラム国」という名前で出発しました。2003年以来イラクで活発になり、2011年以来シリアで活動した集団です。これについては、以前も少し触れる機会がありましたが、今日は、このイスラム国がアメリカと正面から対決するという新しい国際情勢にかんがみて、最新の情勢について触れてみたいと思います。

 イスラム国は、アルカイダと違いまして、西欧の首都、例えば、ワシントン、ひいては、ニューヨーク、ロンドン、パリといった地域において、正面から、あるいは、ひそかにテロや軍事攻撃をかけたということはありません。9・11のようなことをしたことはないのです。しかしながら、それではなぜ、イスラム国に対してアメリカやヨーロッパが軍事攻撃に出ようとしているのでしょうか。また、なぜアメリカは自らの軍である米軍の単独攻撃ではなく、軍事作戦で他の国との同盟を求めているのでしょうか。今日は、この理由について少し考えてみたいと思います。


●背景その1:国際石油資本の利益・利害を脅かし、中東のバランスを壊し始めた


 第1に、アメリカやヨーロッパ、特にアメリカによるイスラム国に対する軍事作戦の一番の理由は、イラクとシリアにおける石油生産、あるいは、石油の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一