「噛める」ことこそ、健康維持の要点
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
生涯にわたる口腔ケアは人類に健康・幸福をもたらす
「噛める」ことこそ、健康維持の要点(2)脳の活性化
上濱正(日本顎咬合学会元理事長/ウエハマ歯科医院院長/歯学博士)
噛んで食べ、咀嚼することは、脳に良い影響をもたらすことが最新の研究で分かってきた。物をよく噛むことで、さまざまな脳神経が活性化し、認知症の予防にもなる。さらには、高齢化で増大する医療費問題に歯止めをかける手段にもなる。(全2話中第2話)
時間:10分19秒
収録日:2019年11月14日
追加日:2020年6月29日
≪全文≫

●三叉神経は脳の覚醒の有力な情報源である


 少し専門的な話になりますが、脳神経に関して顔についている神経は、目、鼻、口、耳など左右対称ということで合計12個(対)あります。例えば、目の神経(視神経)は、目で物を見るためのものです。目を動かすのは「動眼神経」といいます。この神経は、感覚を得ながら情報を脳で処理し、運動を処理して目を動かします。そうした中、三叉神経は一番大きいもので、感覚を取りながら運動する神経なのです。この神経は、脳の中では非常に重要なものです。

 このように脳神経は12対ありますが、物を見て、例えばパリパリたくあんの音を聞き、味を味わいながら、口の中を動かしていくとき、12対の神経全てが重要になるということです。その中で、直接口に関わっているものは12対のうち6対です。ただし、今申し上げた通り、目で見る、音を聞く、匂いを嗅ぐとなると、12対の脳神経を全て使うことになります。

 実は、噛んで食べるということに対して非常に重要な三叉神経は、感覚だけでなく強力な覚醒をもたらします。薬では、この覚醒を起こすことができません。唯一できるのは、少し危ない薬です。

 でも、われわれの脳は、噛んで食べることによって三叉神経を通して脳幹(これは命にとって一番大事なところで、血管の機能や呼吸を司るところ)、視床、さらに脳幹網様体へと情報を全体へ伝えることができます。つまり、われわれの脳は、強力な覚醒効果を持っているのです。

 こうして脳に「食べている」という感覚を入れると、その感覚情報を脳全体に伝えます。さらに脳幹網様体という網目のようなものを使って、脳全体に情報を流します。そうすると、その脳幹網様体によって、大脳皮質、つまり外側の全体に情報が流れていきます。こういうメカニズムで動いているのです。つまり、三叉神経は脳の覚醒の有力な情報源であるということです。噛んで食べることが非常に重要であるということの理由は、ここにあります。


●咀嚼運動の仕組み


 噛んで食べるという咀嚼の基本的パターンは、脳にあります。われわれは歯を動かして食べますが、歯だけではなく、頬や舌に食べ物を載せて食べます。食べ物が落ちないように食べます。この感覚も、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
夜間頻尿の原因とその予防方法
夜間頻尿になりやすい人の特徴とその対策
堀江重郎
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
最新の腰痛医療(1)導入された二つの医療と慢性腰痛
高齢者だけじゃない! 若年層にも腰痛が増えている
菊地臣一
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一