●産業革命が豊かさの差をもたらした
では、いつ差が出たのか。何によって差が出たのか。それは、産業革命なのですね。
250年ぐらい前に、産業革命が始まって、産業革命をやった国が豊かになったのです。
この数字はあまり覚えなくても良いですが、今、世界で200人に1人の人が農業をやれば、世界中の人が食べられるだけの穀物をもうつくれるのです。昔は、全員農業をやって、ようやく食べることができました。つまり、1人分を1人がつくっていたのですが、今は200人分を1人でつくれるのです。
それはなぜかというと、農業に機械が導入されて、肥料がつくれるようになったからで、全て産業革命のおかげなのです。産業革命をやった国が、豊かになって先進国になったのです。
●産業革命の有無で「先進国」と「植民地」に分かれた
では、どこが先進国かといえば、大陸で見てみれば、イギリスで始まった産業革命ですから、ヨーロッパが先進国になっています。それから、ヨーロッパのクローンのようなアメリカ、北アメリカ大陸、カナダ。それから、オーストラリア、ニュージーランド、それらが先進国になったのです。
では、残りはどうなったか。ほとんど皆、植民地になったのです。アフリカは、例外はあるのでしょうか、ほとんど全部のところが植民地になりました。アジアもほとんどがそうですね。中国は植民地にはなっていませんが、アヘン戦争などを仕掛けられたり、実質的にはほとんど植民地と同じような状況になりました。もう一つの大陸が南アメリカ大陸で、今年サッカーのワールドカップをブラジルでやりましたが、あそこももうほとんど例外なく、全部植民地になったわけでしょう。
ですから、1000年前の昔まで見ると、同じような貧しさにあった国が、産業革命によって、人類が初めて非常に物質的に豊かになることができたのです。そういうところが先進国になったのです。そして、残りの9割の国が植民地です。人口でいうと10パーセントぐらいが先進国で、90パーセントぐらいが植民地という時代です。これがつい最近まで続いたのです。
●今、豊かさの差は減少して再び均一化傾向へ
ところが、この図の一番右側を見てみると、急激に先進国のGDPが落ちているのが分かりますね。これは、僕たちが貧しくなったわけではないですね。ただ、それほど成長していない。GDP成長率が年率1パーセントとか、もう本当にゆっくりしか成長しなくなっているのです。
ここを見てみると、この図には中国とインドしか書いていないですが、中国やインドなど、今まで遅れをとっていた国が、急速に工業化を始め、そして、豊かになってきたわけです。ですから、他の今まで植民地だったような国が急激に豊かになってきて、差が接近してきているのです。
こういう時代を見てみると、「僕たちは非常に特殊な時代を生きている」と言えるのです。今までよりも、この頃、1000年前と比べたら1000倍ぐらい物質的に豊かな状況で、「もう1回世界の人々が均一化してきている」というところを、僕たちは生きているわけです。
●これからは、日本なりの輝きを目指すべき時代
そうすると、「中国にGDP(国内総生産)で日本は抜かれた」というようなことは当たり前なのです。中国の人々が1人当たりで日本の10分の1生産するようになれば、中国は人口が日本の10倍いますから、それで生産量は同じになります。10分の2生産するようになれば、2倍の経済の大きさになります。ですから、そのようなことは当たり前なのです。インドにも、それほど遠からず抜かれると思います。しかし、GDPで抜かれる、というようなことは大した問題ではないのです。
なぜなら、イギリスとかフランスなどは、もうずっと昔にそういうことを経験しているからです。どこに抜かれたかといえば、日本に抜かれたのです。ですが、だからといって、フランスなりイギリスが輝きを失うわけではないではないですか。
そういうところを、僕たち、あるいは、君たちは目指していかなければいけない。そのように考えましょう。
●黒船来航から3度の戦争を経て世界の先進国となった日本
そうしたら、日本は今、この図においてどこにいるかというと、これが日本です。日本は、本当に特殊な経験をしているのです。
例えば、江戸時代の終わり、明治維新の時、1867年ですね。その少し前に黒船がやってきたわけですが、あの頃、世界の国は皆、同じように植民地になっていったのです。ですが、日本は植民地になりませんでした。そして、アジア、アフリカ、南アメリカ、ほとんど全ての国が植民地になる中で、日本だけが、一気に先進国に追いつくことができたのです。これはすごいことで、黒船というピンチをチャンスに変え...