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なぜ今、「目利き」の存在が重要になっているのか

答えなき時代、「目利き」と失敗に学ぶ(1)なぜ日本の成長力は減退したのか

情報・テキスト
かつてはどこかの成功事例をあてはめれば答えが見つかりやすい時代だったが、今は通用しない。そんな答えなき時代に必要なのは「目利き」の存在ではないだろうか。日本は皆の合意といった民主的意思決定を重要視してきたが、一方で答えがない中、何がより答えに近いのか、何が本来、力を入れるべきところなのかということは、目利きの判断力も活用すべきである。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:08:07
収録日:2020/08/19
追加日:2020/10/18
タグ:
≪全文≫

●答えのない時代の目利きの重要性


―― 「目利き」というのは、すごい抵抗を受けて大変だと思います。でも、実は目利きはものすごく大事で、ある意味よく見えないものが見えるという目利きの人たちを集めておかないと、例えばお金だけ湯水のように使うけれどもアウトプットは少ししかないということになりますよね。

 先般、レアメタルやチタンの研究をしている岡部徹先生(東京大学副学長で生産技術研究所教授)が「チタン産業には、たまたま自分たちのところに目利きの人がいて、それで10年間のあいだに何度も業界がつぶれそうになったけれども、その業界自体が救われた」とおっしゃっていたんです。

 今までは答えがある時代で、どこかで成功した事例を持ってきて当てはめるという、途上国の開発型の経済だったらいけたけれども、これからは答えがない時代なので、目利きがすごく重要になりますよね。

柳川 そうですね。答えがない中で、何がより答えに近いのか。何が本来、力を入れるべきところなのかということは、その専門家であったり、正しいというか、より知識を持っているという人の判断に頼らざるを得ないと思うんですね。それが、おっしゃるように目利きということだと思います。

 すごく難しいけど重要なポイントは、そこはある種の民主的なプロセスで決めちゃいけないということです。そこはもう目利きに任せるしかない。そこを、よく知らない人からすると、「なんでそんなところがいいと思うんですか」というようなことになるんです。

 だけれども、だからこそある種の民主的な意思決定と目利きの判断力の活用には、相矛盾するところがあるんです。

―― そうでしょうね。

柳川 結局、われわれが分かってきたのは、民主的な意思決定は大事だけれども、全てをそれでやってしまうと、結局十分な情報と判断力を持っていない人の大多数が賛成したものしか実行できないということになって、本当に伸びていくものや本当にすごいものをうまくピックアップできないという問題が起きることです。

 これが、ある種そういう全体の判断を重視するときの課題で、これを乗り越えていかないと、いいものは選び出せないし、いいものに投資もできない。そうすると、目利きと呼ばれているような人の判断をきちっと使っていくことを考えるべきだという方向に行くことになる。そこで、その人たちにしっかり判断を任せられるかというのが、これから問われてきていると思うんです。

 ただ、ではその人たちに任せっきりで、何も判断しないというのは、ある種の独裁制だったり暴走を招いたりする可能性もあるので、目利きがやったことに対しての、ある種きちっとした判断をする、そうしたその他大勢の人の意思決定の誠実さも大事だと思います。

 だから、ここの作り方が社会全体としては問われているところだと思います。

 これは、その時代その時代で環境は違うし、置かれている問題は違います。ある種、集団の中で本当にいいものを選んでいく。政策でも統治でも同じですが、いいものを選んでいきながら進むにはどうしたらいいかという普遍的なテーマではありますよね。


●みんなの合意を大切にしてきた日本


―― そうでしょうね。その制度設計が日本では今、壁にぶち当たってきているといいますか、これだけ改革の時代といわれながら、1990年代の不良債権処理あたりから始まって30年ほど同じことをやっていて、あまり成果が出ていないと。

 当事者は毎回毎回、結構一生懸命やっているんだけれども、結果だけ見ると、「国力はというと、平成の30年は明らかにアウトプットが出ておらず、かなり競争力を落とした時代ですよね。

柳川 そうですね。だから、そこの部分は、いろんな理由があると思いますが、今回の話に関連していえば、ある種の民主的な決定というか、みんなの合意を大事にするというか、そこの部分が強かったと思うんですね。

 おっしゃるように、進むべき方向を誰もが分かっているときは、みんなが賛成するものが一番いいものになると思いますが、それが分からなくなったときに誰かに任せることが重要です。その誰かが「いい」ということ、「こっちだ」と思うことに本当に賭けてみるということをもう少しやっていかないと、先には進めないと思います。


●過度なコンプライアンス遵守は成長を妨げる


柳川 このことについて例としてよく思うのは、いわゆる銀行の融資の話です。

 昔は支店長が「ここだ」といえば、理由はなんだかよく分からないけれども、例えばとにかく社長の顔が良かったとか、その顔つきがすごく将来性を感じさせたということで融資が実行されたことがあったと聞いています。それがだんだんと「そんなことじゃリスクが大きいから、もうちょっとちゃんと審査をしましょう」ということになり...
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