●リスクテイクと適切な評価をセットで行う
柳川 前回、目利きを大事にしなきゃいけないんじゃないかと言われましたが、その通りだと思います。ただ、こういう時代なので、目利きであっても失敗もします。
―― そうでしょう。
柳川 それが、一度でも変な投資をしてしまったら、変なものを選んでしまったら、「おまえはとんでもない目利きだ」とかと周りから言われるような社会であったら、本当に目利き力がある人も、「これです」とは言う気がなくなってしまいますよね。
―― そうですよね。リスクテイクした人がただ痛い目に遭うだけということですね。
柳川 そうなんです。だから、目利きであっても当然100パーセント分かるわけではないですし、目利き力を発揮できる人はリスクを取ってそういうことをやっているので、それに対しての適切な評価をするということをセットでやっていくことが、そういう意思決定なりそういう選択ができるようにしていくために大事なポイントなんだろうと思うんです。
●真剣にリスクテイクして、失敗から学ぶ
―― これは、例えば2回くらい失敗していると、3回目に成功する確率は、真剣にやっている人だったらものすごく高まるということですよね。
柳川 そうなんです。
―― これだけイノベーションや環境変化が激しく、新しい技術が次々に出てくる時代が来るなんて、誰も見えないわけですよね。そのときに、真剣に考えてリスクテイクする。ほとんどのケースで最初は失敗するだろうけれども、2回目は、1回痛い目に遭っているからその失敗した要因を除去してくるので、相当賢くなっている人たちですよね。それでも、時代の変化が激しいのでなかなか追いつかないかもしれないけれども、その人に3回目を任したほうが成功率は上がりますよね。
柳川 上がりますね。そういう回数を重ねる。そこから学ぶことはすごく大きい。逆にいうと、経験、特に失敗の経験を通じてしか学べないことというのが、かなり多くなってきていると思います。
やや強い言い方をすれば、そういう失敗が逆に不可欠になってきている時代なんだと思うんです。それを「失敗は許容しない」ということになると、実は本当に大事なことが誰も習得できないことになりかねない。実は2、3回失敗した人じゃないと任せないぐらいのことが本当は必要なんだと思うんです。