【入門】日本仏教の名僧・名著~最澄編
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すべては救われる――最澄の「法華一乗」思想が与えた影響
【入門】日本仏教の名僧・名著~最澄編(4)一乗思想から広がる成仏
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
法華経には「一乗」と「三乗」の区別がある。大乗の教えだけが人を救い、小乗では救われないというのが「三乗」、すべては救われるというのが「一乗」である。最澄の考え方は「法華一乗」といい、三乗、つまりそれぞれ違っていても、最終的には一つの教えによってすべては救われるという。そこから、生きとし生けるものみな仏の本質を持っているという「一切衆生悉有仏性」、さらには有情も非情もみな成仏できるという「草木成仏」の考え方へと広がっていくのである。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分11秒
収録日:2020年8月20日
追加日:2021年1月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●大乗の教えによってすべては救われるという「法華一乗」


―― 前回先生からお話があった「一乗思想」について、今回はお聞きしていきたいと思います。この一乗思想というのは、何か日本に独特とまでは言わなくとも特徴的なものはあるのでしょうか。

賴住 はい。今言っていただいた一乗思想は、法華経に基づく思想です。法華経には「一乗」と「三乗」の区別があります。三乗とは何かというと、「声聞乗」「縁覚乗」「菩薩乗」と三つに分かれているのです。

 声聞乗は、お釈迦さまの声を聞いて修行をしていたお弟子さんたちということです。

―― 「声を聞く」と書く「声聞」ですね。

賴住 そうです。これはいわゆる小乗仏教の人たちです。

 縁覚乗というのは、「縁を覚(かく)する(さとる)」と書くように、縁起の思想を自分で考え、山の中にこもって修行している人たちということで、これも小乗仏教です。要するに声聞乗・縁覚乗は小乗のことなのです。

 菩薩乗はまさに大乗です。大乗仏教の中でも、実は二つ考え方があって、「小乗になってしまったら、その人はもう絶対に救われない」という考え方と、「小乗の人たちでも、大乗の教えに帰依すれば救われる」という考え方の二つがありました。

 最澄は、まさに「法華一乗」と言いまして、三乗それぞれ違っていても、最終的には一つの教え、法華経すなわち大乗の教えによってすべては救われるという考え方だったのです。


●多くの僧が求めた法華経の魅力


 実は南都六宗の一つに「法相宗」という宗派がございます。

―― 奈良ですから南都ですね。

賴住 はい、そうですね。法相宗は、奈良時代や平安時代に非常に大きな影響力を持っていた宗派です。この法相宗では、「三乗の違いは絶対的であり、もし小乗仏教を信仰してしまったら、もう二度と大乗では救われない」という考え方でした。

 ところが、法相宗から徳一(とくいつ)という僧が出て、最澄と論争します。結局どちらが勝ったかよく分からない論争ですが、最澄のほうは法華一乗の立場を非常に強く打ち出して、「あらゆる人が救われる」ということを、強く主張していきます。

 日本の仏教を見た場合、法華経の影響は非常に強くあります。私たちは法華経というと、天台宗や日蓮の題目「南無妙法蓮華経」などを思い浮かべますが、決して一部の僧だけではなく、浄土系以外のあらゆ...

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