【入門】日本仏教の名僧・名著~最澄編
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
最澄が比叡山での修行の際に『願文』に込めた願いとは
【入門】日本仏教の名僧・名著~最澄編(2)『願文』で立てた志
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
『願文』は、比叡山12年の修行に入る際に最澄が立てた「志」である。「一切皆苦」の仏教的世界観に立ち、苦しみのもとを考えかたの誤りに求め、一切衆生の悟りと救いを求めていく名文だ。若き最澄がこの文章に込めた願いは、厳しい修行の年月を支えただけでなく、世に出てからの「利他」をも約束していた。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分35秒
収録日:2020年8月20日
追加日:2020年12月31日
カテゴリー:
≪全文≫

●修行に際しての志を表明した最澄の『願文』


―― 今回からは最澄の息吹ということで、『願文(がんもん)』や『山家学生式(さんげがくしょうしき)』の原文を見ながら進めていきましょう。こうした中から、「一隅を照らす」や「山川草木悉有仏性」のように山や川や草木にも仏性があるという思想に発展していったプロセスについて、お話をうかがいたいと思います。

 まずは『願文』ですが、これはどういう位置づけの文章でしょうか。

賴住 はい、前回も申し上げましたが、エリートの僧侶だった最澄は、その地位を捨てて比叡山にこもります。当時の比叡山は一種の聖地のような場所だったと考えられます。そこにこもって12年間修行し続ける時に、自分の修行についての「志」を文章にして残したということになります。

―― なるほど。

賴住 ですから、割に若い時期の最澄の考え方が非常によく出ているということになるかと思います。

―― 自分はこのように修行するのだと表明したような文章ということですね。

賴住 はい、そういうことです。


●仏教の根本思想を述べた『願文』の冒頭


―― では、冒頭を読ませていただきます。

「悠々たる三界は純(もは)ら苦にして安きことなく、擾々(じょうじょう)たる四生はただ患にして楽しからず。牟尼の日久しく隠れて、慈尊の月未だ照さず。三災の危うきに近づきて、五濁(ごじょく)の深きに没(しず)む。」

 非常にリズミカルな文章ですね。

賴住 そうですね、大変な名文としてよく知られている文章です。まず最初に「三界(さんがい)」という言葉が出てきます。「三界に家なし」などというように、迷いの世界を「欲界・色界・無色界」の三つに分けたもので、迷いの世界の全体、すなわち私たちが生きている世界全体が苦であるといいます。「一切皆苦(すべては苦しみである)」というのが仏教の一番基本的な考え方になりますが、まさにそれを最初に打ち出すために、こういう言葉を述べています。

 次の「擾々たる四生」にまいります。

「四生(ししょう)」では、生きとし生けるものを生まれ方の四種で分けています。「胎生(たいしょう)」は母親のお腹から生まれる、「卵生(らんしょう)」は卵から生まれるというように四つの生まれ方で、要するに生きとし生けるもののすべてという意味で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高