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縁と偶然! 指導教官と真面目な黒沢君とのエピソード

研究者を志したきっかけ

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
「人生はアクシデンタリーに決まるものだ」と言う小宮山宏氏。 化学工学を研究する道に進んだが、そこにはいくつかの偶然が重なっていた。果たしてその偶然とは? 一般のメディアではなかなか触れることができない、小宮山氏の人間味にあふれる魅力が満載のインタビュー。
時間:09:02
収録日:2014/07/15
追加日:2014/10/23
カテゴリー:
≪全文≫

●人生はアクシデンタリーに決まるものだ


―― 先生、今度、お孫さんが生まれましたよね。

小宮山 誰ですか。僕? 生まれました。

―― 先ほど言われた話の中に、「今の職業は3分2がなくなって、新しい職業が生まれる」とありました。そこで、お孫さんにどういう人になってもらいたいですか。どのようなプロセスを行ってほしいですかね。

小宮山 それを考えないのが僕です。それは考えてはいけないと思っています。そんなものは若い人が決めること。だから、僕は息子にもほとんど言っていないですよ。

―― 言っていない?

小宮山 言っていません。それは言わないようにしています。だから、名前も親の思いがあまり反映しないような名前を付けているのです。僕の同期には、「勝利」という名前が多い。また、あの八紘一宇から「邦」という字を使った「邦夫」とか、そういう名前が多い。僕は、そういう名前は付けません。だから、何となく「尚樹」とか「紀子」と付けましたが、ほとんど意味はないでしょう。

―― もう自分で自由に選べと。

小宮山 そうです。だって、若い人がどんな職業に就くか、そんなことは分かりませんから。

―― それはそうですよね。自分の生きた時代と根底から違っていますものね。

小宮山 だから、若い人にどんな人生がいいかというと、強いて言えば「自分の好きなように生きろ」ということ。そこは自由だと、僕は思います。

―― でも、それがやはり一番いいのでしょうね。

小宮山 と、僕も思います。

―― 自分で選んでいくから、そこで挫折しようが何しようが、全部経験値となるわけです。

小宮山 だって、人生は計画などできないし、計画したら面白くないのが人生だと、僕は思っています。どういう人と結婚したいか、そんなことが分かるものでしょうか。

―― 出会いと偶然性ですよね。

小宮山 アクシデンタリーに決まるのです。


●研究者の道へ進むきっかけ1~叔父の言葉と卒論研究~


小宮山 僕は、化学工学という分野が専門ですが、この間、「私の履歴書」のようなものを書いたのです(『化学工学』2014年第78巻連載「私の研究者・技術者人生」)。そこにも書きましたが、化学工学に進学したことも、進路を出す直前の夏休みに叔父の家に遊びに行ったことがきっかけでした。そのとき、叔父はたまたま三菱化成に勤めていたのです。

―― 小林(喜光)さん(株式会社三菱ケミカルホールディングス代表取締役社長)のところではないですか。

小宮山 そうです。それで、叔父が「これからは化学工学だ」と言ったのです。だから、僕も化学工学だと納得してしまったのです。偶然です。

―― 偶然ですか。それで、大学で研究をやろうと。

小宮山 研究をやろうというか、どこの分野に行くのがいいのかなと思っていたら、「これからは化学工学という分野がいい」と、そのとき叔父が言って、それで行ってしまったのです。大学に残ったのは本当に偶然です。というのは、東大は2期制でしょう。それで、4年生の最後の学期が卒論なのです。これをやらないと卒業できない。だけど、この時期は、まさにアメフトのレギュラーシーズン真っ只中。しかも、あのときは東大初めての1部だったし、僕は最上級生でしょう。だから、僕は「夏休みに少し実験をやらせてください」と先生にお願いしたのです。

―― 先にね。

小宮山 それが面白かったのです。

―― はまってしまったのですか。

小宮山 面白かった。

―― すごいですね。

小宮山 先生が一緒にやってくれたのです。今考えてみれば、卒業指導教官だった井上博愛先生は、当時は助教授になったばかりの先生で、張り切っていたのでしょう。業績を上げなければいけないし、卒論のために来た学生が、一生懸命やりそうに見えたのでしょう。それに、「こういうデータを取れ」「ああいうデータを取れ」と、いろいろと言われた通りにやっただけです。そこから、面白い結果が出てしまったわけです。

―― 先生、それは「分かった」という瞬間があったのですね。

小宮山 そう、それもそのうちの一つです。


●研究者の道へ進むきっかけ2~推薦入学という偶然~


―― なるほど。そこで人生の転機ですね。

小宮山 人生の転機です。『化学工学』にも少し書いたのですが、僕のときは4年生のだいたい半分ぐらいが学部で卒業して、半分ぐらいは修士に行きました。だから、僕は卒業したら大企業に行くと思っていたのです。親にも学者などいません。当時、化学に進んだら、それこそ三菱化成や住友化学、また、あの頃は千代田化工というエンジニアリング会社なども人気がありました。そういうところに行くのが普通だと思っていたから、僕もそうなるのだろうと思っていたし、そのために修士などに行く必要はなかったのです。

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