尖閣諸島の周辺で「日中共同開発を」の真相
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
尖閣に中国漁船が来て大騒ぎになったのは最近の話ではない
尖閣諸島の周辺で「日中共同開発を」の真相(2)中国漁船騒動と自民党内の大論争
若宮啓文(元朝日新聞主筆)
日中平和条約の交渉が大詰めを迎えていた1978年4月、中国漁船が大量に尖閣諸島に侵入した。これをきっかけに大騒ぎとなる自民党総務会。その後、どのように共同開発論が展開されていったのか。日中の首脳の動きとともにその経緯をたどる。(後編)
時間:17分58秒
収録日:2014年9月11日
追加日:2014年11月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●尖閣列島に中国漁船が来たのは1978年が最初


若宮 前回は、尖閣をめぐって最初の日中首脳会談で共同開発論が出たのではないかという推理をお話したのですが、実は、それからしばらくして、共同開発の話が日中の政府間で具体的な課題として表に出ているのです。

その話をしたいのですが、そういう平和な話に行く前に、ここ何年も中国から漁船が来て大騒ぎになっていますけれど、その話から始めたいと思います。

 一番最初に大騒ぎになったのは、なんと1978年の4月で、中国から漁船が大挙して来たことがあるのですね。これは、平和条約の交渉が大詰めを迎えていた頃なのです。

 朝日新聞の当時の記事の大見出しを読むと、「尖閣列島に中国漁船群、領海侵犯で退去求める」とか、「中国漁船、警告を無視 悪質な場合は検挙も」と大きく出ているのです。皆忘れているのですが、これは最近もめた記事ではないのです。1978年ですからね。


●自民党の総務会で議論が紛糾


若宮 それで、自民党の総務会では大騒ぎになるのです。総務会には、ご存じのように、ハト派とタカ派がいます。しかも、タカ派が結構多いのです。例えば、天野光晴さんという人は、「大変なことだ。灯台や避難港を早くつくるなど、実効的な支配の確立を急がなければいかん」という意見を言うのです。

 総務会には官房長官も出ていました。当時の官房長官は、安倍晋三さんのお父さんの安倍晋太郎さんで、「今いろいろ考えている」と言います。総務会はタカ派が多いですから、実はその少し前の総務会で「灯台やヘリポートをつくれ」と決議しているのです。政府としても、その決議に基づいて「今、検討中です」と言うのです。

 すると、藤尾正行さんというすごいタカ派の人が、「検討中など、のんきなことを言っている場合ではない」「いかに無理があろうと、国の威信や主権に関わる問題なのだから早くやれ」とせっつくのです。

 それから、町村信孝さんのお父さんの町村金五さんという人が、「中国が退去を拒否したら、どうするのだ。実力部隊がなければ、どうやって守れるのか」と言い出します。

 そうすると、玉置和郎さんという人は、「海上保安庁ではなく、防衛庁が対処しなければ駄目だ。不退去だったら、これを爆撃できる自衛隊機はどこにいるのか」と言います。

 その総務会には当時幹事長だった大平正芳さんも出...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
グローバル環境の変化と日本の課題(6)組織改革と課題解決のために
働き方改革の鍵はエンゲージメント、経営者の腕の見せ所
石黒憲彦