尖閣諸島の周辺で「日中共同開発を」の真相
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
石橋湛山賞受賞作から尖閣にまつわる秘話を著者が語る
尖閣諸島の周辺で「日中共同開発を」の真相(1)田中角栄と周恩来の胸の内
若宮啓文(元朝日新聞主筆)
来年は戦後70年。年末に新著『戦後70年 保守のアジア観』(朝日選書)を出す若宮啓文氏が、その中からとっておきの秘話を紹介する。本編で紹介するのは田中角栄と周恩来の日中首脳会談で、尖閣諸島周辺の石油の共同開発論が飛び出したという謎だ。関係者の証言を手がかりに真相に迫る。(前編)
時間:12分27秒
収録日:2014年9月11日
追加日:2014年11月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●日中国交正常化が決まる時、首脳会談で共同開発の話題が出ていた?


若宮 来年は戦後70年、あるいは、日韓条約50年という大変な節目の年ですけれども、私は、ちょうどそれに合わせて、年末に1冊の本を出す予定です。『戦後70年 保守のアジア観』(朝日選書、2014年12月10日発売)という本で、特に保守政治がアジアをどう見てきたかという話ですが、以前に書いた本(『和解とナショナリズム―新版・戦後保守のアジア観』、朝日選書)を大幅に直して新しく出す予定で、今は結構まだ執筆で四苦八苦しているのですが、その中で、いくつかとっておきのお話を先んじてご紹介しようかと思います。

―― 楽しみですね。

若宮 一つは、尖閣諸島が今これだけ問題になっているでしょう。ご存じと思いますけれど、1972年に田中角栄首相と大平正芳外相が北京に行って、毛沢東主席の下で首相をやっていた周恩来さんと首脳会談を行ったのです。

 それで国交正常化が決まるのですが、その時に尖閣の問題を田中さんの方から、「あなたはどう考えるのだ」と尋ねて、周恩来さんは「この問題は今はやめておきましょう」と言ったという話は、よく伝えられていて、ご存じだと思います。

 公式記録ではそういうことなのですが、当時、尖閣は石油が問題になっていた所でしたので、実はその時に田中さんが「将来、あそこで石油の共同開発をするのはどうだろうか」と聞いたという話があります。それで、私の見るところ、何と答えたかは別として、周恩来さんも当時同じことを考えていたのです。そのことを今から少しお話しようと思います。

 実は、二階堂進さんという当時の官房長官も中国に一緒に行って、首脳会談に同席していたのです。

―― 珍しいケースですね。

若宮 珍しいケースです。その二階堂さんが、1997年に朝日新聞のインタビューに答えて、「実はあの時、田中首相が“石油の共同開発をしようではないか”と言ったけれど、周恩来は乗ってこなかった」という話をしているのです。しかし、その話は、他に証拠がないので、それほど大きな記事にはなりませんでした。

―― 確証が取れなかったわけですね。

若宮 外務省は否定するし、記録はないということで、いまだに二階堂さんの証言だけになっているのです。


●田中角栄が通産大臣の時、共同開発の提案を検討していた


若宮 ところが、私は...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
生成AI「Round 2」への向き合い方(5)生成AIの活用イメージ
Copilotの提供方法を紹介~一般向けから業務特化型まで
渡辺宣彦