エレクトロニクス産業の凋落要因と化学産業の目指すべき方向性
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「ヘルスケア」を軸にライフ革命を起こす!
エレクトロニクス産業の凋落要因と化学産業の目指すべき方向性(後編)
小林喜光(東京電力ホールディングス株式会社 取締役会長)
コンシューマー・エレクトロニクス産業の凋落を受けて、化学産業はいかなる道を歩むべきなのか。“哲人経営者”と呼ばれ、日本を代表する経営者の一人である三菱ケミカルホールディングス社長・小林喜光氏が語る「21世紀を生き抜く資源は、知恵しかない」という言葉の真意に学ぶ。(後編)
時間:13分12秒
収録日:2014年9月1日
追加日:2014年11月22日
≪全文≫

●化学業界にも「モノからコトへ」の意識が必要


小林 では、他のインダストリーはどうなのか。ケミストリーは僕が一番関連している業界ですが、やはり化学も「モノからコトへ」の意識を一定程度持たなければ、ただつくっているだけでは差がつかなくなってしまったと言えるでしょう。

 「コト」も、「モノ」として見れば最終的には「モノ」でしかないのですが、その「コト」をつくるところにICTを一つ噛ませる。それが、ドイツでいう「インダストリー4.0(第4の産業革命)」、あるいは「インターネット・オブ・シングス(IOT)」と呼ばれるものですが、プロキュア(購買)に始まりマーケットに出す販売チャネルまでの工程を、どういう形でシステム化するのかが問われるし、必要になると思います。


●「コモディティ化」の波~ポリエステルの原料・テレフタル酸をめぐる攻防


小林 それと、やはり「コモディティ化」ですね。コンシューマー・エレクトロニクスが完全にコモディティ化してしまったことも、先ほどの解析で、一つの原因として挙げましたが。

―― 本当にコモディティ化しましたね。

小林 中国ではもはや太陽電池でさえ、あっという間にコモディティ化してしまうのです。これは、ケミカルも同じです。リーマン・ショックの後、政府が民間に50~60兆円のお金を注ぎ込み、その中のかなりの部分が鉄鋼とケミカルの増産に回され、コモディティ・ケミカルに投資されました。資金投下は2009年ですが、工場をつくったりする準備に3年ぐらいはかかります。ということで、2012年ぐらいからどっと関連製品が出てきたのです。

 ものにもよりますが、当社が中国やインドでも展開しているテレフタル酸という、ポリエステル繊維やポリエステルフィルムの原料があります。テレフタル酸という有機酸とエチレングリコールという2価のアルコールでポリエステルができるのです。

 このポリエステルは、繊維の中ではまだまだ「王様」と言われていて、世界需要が今も5パーセントから6パーセントは伸び続けています。また、ポリエステルフィルムなども、プラスチックとして非常に応用性のある素材です。しかし、その原料としてのテレフタル酸自体の触媒や触媒プロセスについては、欧米の企業はデュポンを含めて撤退しました。むしろ中国やインドに、その技術を教えたのです。

 そういう技術...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
デモクラシーの基盤とは何か(3)政治と経済を架橋するもの
「哲学・歴史」と「実証研究」の両立で広い視野をつかむ
齋藤純一
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏