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グーグルもGメールも×‥文化大革命以来の厳しい言論弾圧

中国事情・最前線~北京での“トラック2外交”から

情報・テキスト
今、中国で何が起こっているのか? 習近平という得体の知れない強大なリーダーはどこへ向かおうとしているのか? 北京を訪れたジェラルド・カーティス氏が“トラック2外交”から見た中国事情の最前線を語る。
時間:08:00
収録日:2014/11/10
追加日:2014/12/16
タグ:
≪全文≫

●“トラック2外交”から見えた、中国の内実


 先日、政府外レベルでのいわゆる“トラック2外交”として6人ほどで中国の北京に行きました。“トラック2外交”とは、政府関係者のOBや私のような政策研究分野の学者などによる政府外の外交活動を言います。顔ぶれは、以前の駐中大使が2名でウィンストン・ロード氏とステープルトン・ロイ氏、海軍の元大将、学者2名といったような、中国に非常に詳しい人ばかりです。

 向こうで、政府の方々や、政府に近い知識人、習近平さんに直接レクチャーするような人など、さまざまな人たちと会い、いろいろな印象を持ったのですが、特に印象的だったことが二つあります。


●習近平は何を考えているのかよく分からないが、毛沢東以来の強いリーダー


 一つは、「習近平は本当に何を考えているのか、よく分からない」と、多くの知識人が言っていたことです。というのも、彼は「チャイナ・ドリーム」を掲げていますが、しかし、チャイナ・ドリームとはどのようなドリームなのか、中身がよく分かりません。あるいは、「アジアの新しい安全保障のフレームワーク」などと言っていますが、しかし何のフレームワークかも分からないし、このようないくつかのスローガンを出していますが、中身がまだはっきりしていない。ですから、もういろいろな解釈があるのですが、分からないのです。

 ただ、皆が口をそろえて言うのは、「これほど全権力を掌握した強いリーダーは、毛沢東以来だ」ということです。しかし、その強いリーダーが何をするのかが、はっきりしないのです。

 例えば、日米同盟は反対しない。反対しないけれども、ただし中国の利益に関わる問題について、日本とアメリカが組むのは嫌だといい、もしそうであるなら、日米同盟に反対であるという。しかし、尖閣問題を考えれば、日米同盟の安保第5条によってアメリカが日本を守る立場ですから、ではそれをもって日米同盟に反対しているかというと、これは反対しているのか、いないのか、はっきりしない。

 要するに、まだトランジション(変わり目)というか、過渡期にあり、習近平さんはますます強くなるけれども、これからどのように動いていくか、まだ分からないのが実状です。

 ですが、最近の中国の動向を見ていると、僕は、彼のことを比較的「慎重的楽観主義者」ではないか、英語で言えば、“conscious optimist”ではないかと思っています。

 彼は、最近の南シナ海や東シナ海における非常にアグレッシブなやり方が、やはり中国の利益になっていないと見ていると思います。東南アジアの国々が皆、怖がってしまって、関係が悪化しました。日本人も、中国の脅威を感じるようになって、世論にも反中の意見が非常に強まっています。そして日本の中国への直接投資が、去年の半分以下に減っています。日本にとってもそうであるように、中国にとっても日本のテクノロジーや日本との経済関係はやはり非常に大事ですから、やはり外交の軌道修正をせざるを得ないという背景があったと思うのです。ですから、最近、トーンが変わってきました。


●文化大革命以来の厳しい言論弾圧が、まだしばらくは続く


 もう一つ、印象的だったことは、これは事実であり、また非常に困ったことなのですが、これほど言論への弾圧の強い時代は、おそらく文化大革命以来だということです。非常に厳しい弾圧が行われています。

 ですから、学者たちはプライベートで話し合うと結構言いたいことも言うのですが、しかし、記事にしない。論文は書かない。新聞に載らないようにする。そういう状況が続いていました。ただ、最近では、プライベートでも、前より気を使うようになっています。習近平さんや中国政府の批判を言って、もしそれが漏れたら自分は非常に困るという、そういう異様な雰囲気が非常に強いです。

 また、中国は今や第2の経済大国になり、グローバリゼーションの中で成功してきた国であるわけですが、しかし、例えば北京のホテルに宿泊して、コンピューターを開けてメールをしようと思ったら、Gメールはブロックされています。グーグルもブロックされています。ニューヨークタイムズも読めず、ブロックされているのです。

 こんな異常な状態がいつまでも続くはずはないのですが、中国の政府が中国の国民のことを恐れていなければ、これほど弾圧する必要はないのです。要するに、「抑えないとどうなるか分からない」ということで、やはり中国共産党は自分に十分な自信がないということです。心配なのです。

 ですから、いつまでもこのままで行けるとは思いませんが、この反対意見を力で抑えるやり方は、まだ当分は続くでしょうし、それでしばらくは何とか成功するとも思うのですが、もう少し長い目で見れば、中国はやはり政治的にも変わ...
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