野鴨の哲学~安楽から離れ自分自身を生きる
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
キェルケゴールの思想…野生の鴨の教えが実存主義を生んだ
野鴨の哲学~安楽から離れ自分自身を生きる(1)自らの主体で生き抜いたキェルケゴール
行徳哲男(日本BE研究所 所長)
雪のコペンハーゲンで、42歳という若さで野垂れ死んだ実存哲学の創始者・キェルケゴール。その哲学の根底には、彼が少年時代に実際に体験した自然からの教えが宿っていた。感性論哲学で各界著名人に多大なる影響力をもつ行徳哲男氏による「野鴨の哲学」とは?(全3話中第1話目)
時間:12分15秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2015年1月6日
≪全文≫

●スキャンダルまみれの哲学者・キェルケゴール


―― 実践的哲学の行徳哲男先生に、キェルケゴールの「野鴨の哲学」について教えていただくということで、よろしくお願いします。

行徳 デンマークの首都にコペンハーゲンという街があります。1855年の11月、この街にたいそうな雪が降ったわけです。そこで、街の人はシャベルを持ち出し、雪かきをしていたのですが、その雪かきに人が引っかかったのです。皆で掘り起こして病院に担ぎ込んだのですが、誰もこの人間の世話をしようとはしなかった。「あんな野郎はまっぴらごめんだ」と。なぜこの人物がそれほどまでにデンマークで嫌われ者だったのか。

 一つには、この人物、すなわちキェルケゴールにはスキャンダルがあったからです。そのスキャンダルというのは、レギーネ・オルセンという女性とのスキャンダルです。この子は、もともとその当時の大蔵大臣、そして国立銀行総裁の娘です。しかし、このキェルケゴールは、この子に恋い焦がれたのです。

 彼は、もうあらゆる手段を通してこの子と婚約までこぎ着けるのですが、さて、婚約はしたものの、一体その結婚とは何なのか、人生とは何かを思い詰め始め、実はこの婚約を平気で破棄してしまいました。それで、激怒したのがこの子の父親だった大蔵大臣です。この父親は、すぐに娘を海外に行かせて、自分の銀行の部下と結婚させたのです。しかし、もうこのスキャンダルは、ふらちな人間としての烙印をキェルケゴールに押したわけです。


●「何となく」を徹底排除し、一度しかない人生を生き抜く


行徳 そして、決定的にこの人物・キェルケゴールをデンマーク中の嫌われ者にしたのは、『瞬間』というビラでした。彼は、日曜日になりますと教会の前に立つわけです。デンマークは今でも宗教国家ですが、国が教会を建てています。確か、牧師の一部は公務員です。その国教を彼は攻撃したのです。

 彼は、日曜日の朝になりますと教会の前に立って、この『瞬間』というビラをばらまきます。このビラで彼は何が言いたかったのか。それは、「あんたたち、月曜日から土曜日まで、ぼんやり生きてこなかったか」というものでした。何となく朝起きて、何となく朝飯を食って、何となく仕事に出かける。そして、何となく仕事を終えて、家へ帰ってくる。何となく家族が語らい、何となく晩飯を食って、何となく床に入る。

 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
田口佳史
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保