イスラエル対ハマス…その背景、影響、未来
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
オスロ合意・アブラハム合意を潰す…ハマスやヒズボラの狙い
イスラエル対ハマス…その背景、影響、未来(2)競争的共存の否定
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
今回のハマスによる攻撃の責任を、ただ一方的にイスラエルに押し付けるのは、すこぶる簡単明瞭に過ぎる。ハマスの今回の攻撃の真意を探るには、ハマスがオスロ合意やアブラハム合意について、どのような思いを抱いていたかを知る必要がある。中東において「競争的共存」ともいうべきものが模索される中で、ハマスはそれを破壊し、潰そうと目論んだのではないか。その狙いは、ヒズボラ、そして国としてはイランも共有しているものであろう。(全4話中第2話)
時間:10分15秒
収録日:2023年10月17日
追加日:2023年10月24日
≪全文≫

●責任をイスラエルに押しつけるのは、すこぶる簡単明瞭に過ぎる


 現在進行しているパレスチナ自治区ガザの事態は、たいへん痛ましいものがあります。ハマスが攻撃することによって、多くのイスラエル人が殺害され、人質として拉致され、行方不明になっていることに対して、イスラエルは報復攻撃を加えている。この報復攻撃によって、多くのパレスチナ人が犠牲になるという循環的構造にあるのは事実です。

 問題は、前回申しあげたように、統治責任を有し、統治の主体であるハマスが、自分たちが責任を負うべきパレスチナ人の巻き添えによる犠牲が出ることが必至のイスラエルへの攻撃を仕掛けたということ。このことは、きちんと見ておかなければいけないと思います。

 ハマスの立場からすると、責任はすべてイスラエルにあるというでしょう。パレスチナ人の自決権を踏みにじって、ヨルダン川西岸をはじめとした地域に入植地を建設し、オスロ合意などによるパレスチナ人の誠意ある努力や営みを無視してきた、ということです。

 全体的あるいは長期的局面において、このハマスの主張は必ずしもすべて間違っているとはいえません。しかし、現在のこの短期的な局面、今われわれが観察しているこの小局面においては、この責任をイデオロギー的にイスラエルに押しつけるというのは、すこぶる簡単明瞭に過ぎます。こうしたことは、政治の主体であり、まがりなりにもガザという地域を支配している統治の主体としては、現実的な政治の担い手としていえば、無責任のそしりを免れないと私は思うのです。


●オスロ合意、アブラハム合意…ハマスの真の狙いとは?


 限定的とはいえ、まがりなりにも自治の主権を認められているパレスチナ国家の一部がガザです。そのガザにおいて、ともかく最初に選挙の結果として、与党第一党となって統治を委ねられたハマスが、自分たちの領土・自治地域を一種の隠れ蓑にしながら、隣国イスラエルの市民たちに無差別攻撃を、かつても行なったし、現在も大規模に行なったという事実です。

 イスラエルとパレスチナの共存をめざしたオスロ合意(1993年)を含めて、中東諸国がこれまで努力してきた中東諸国の平和の営みを、私はかつて「競争的共存」と呼びました。この「競争的共存」のなかに、当然、パレスチナも入らなければいけないというのが、私の考えです。

 ところが、この「競争的共...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(2)世界市民と国家連合
「コスモポリタニズム」の理想と「国家連合」というプラン
川出良枝
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純