イスラエル対ハマス…その背景、影響、未来
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト…周辺国の思惑
イスラエル対ハマス…その背景、影響、未来(3)調停できる国はどこか
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
これまで、国際世論がパレスチナの優位性として認めていたのは、彼らの道徳性であり忍耐力であった。だが、今回のハマスの攻撃によって、これまで同情的であった欧州諸国やインドまでもが、イスラエルの自衛権を認める側に立つことになった。だが、イスラエルが本格的に地上侵攻すれば、大きな被害は必然である。ここで中東において「責任ある国」の調停を期待したいところだが、周辺諸国の実状と思惑はいかなるところにあるのだろうか?(全4話中第3話)
時間:11分24秒
収録日:2023年10月17日
追加日:2023年10月25日
≪全文≫

●パレスチナが持っていた優位性は道徳性と忍耐力だったが…


 皆さん、こんにちは。イスラエルの側に、もちろんオスロ合意の無視――パレスチナ自治領土(ヨルダン川西岸)に対して無制限に入植地を建設するようなオスロ合意違反、あるいはパレスチナの民族自決に関して、彼らの権威を踏みにじった行為があったことは、もちろん事実です。

 それはもちろん、私たちは見なければなりませんし、イスラエルのそうした行為についてはこれまでも批判してきました。しかしだからといって、(ハマスが)開戦理由・開戦事由(casus belli)も開示せずに、いきなり大量のロケット弾をイスラエル領内の集落や市街地などに、雨あられとばかりに浴びせるということになると、これは国際的にも批判を免れません。

 パレスチナが、ある意味でイスラエルに対して持っていた優位性というのは、パレスチナ人民の持っている道徳性と、彼らの忍耐力です。この道徳性と忍耐力が何かといえば、イスラエルが攻撃し、かつ侵攻したとしても、それに対して極力、いわゆる忍耐袋の緒を切らない。そうした非常に自制的なかたちで、ある意味では文明論的に対応してきたわけです。

 それであるがゆえに、日本を含めた国際世論のなかには、パレスチナ人の大義や、将来未来に対して本当に案じ、かつ非常に微力ではあるとはいえ、人道支援、医療支援、教育支援を含めて心ある政府や国民が支援してきたことがあるのです。しかし、今回のシーンをいきなり見せられてしまいますと、国際的にも、パレスチナ人が持っていたある種の道徳性や悲劇性というものに対して、ものの見方が少し反転するという傾向も否定できなくなってきたわけです。

 げんに、これまでフランスやイタリアをはじめとするヨーロッパ(EU)の世論は、パレスチナ人に対して非常に好意的でありました。そしてかつて第三世界の盟主と呼ばれたインドも、パレスチナ人に対して好意的な見方をしてきました。しかし、今回の(ハマスの)行為によって、インドやフランスはじめ欧州世論が、イスラエルの自衛権をむしろ認めることになったのは、まことに今度の事件の特殊性を物語っています。


●中東域内の「責任ある国」の調停は実現するか?


 ところで、イスラエル軍が、ささやかれている地上戦に突入した場合、ガザの一般市民のあいだに多数の犠牲者を出す痛ましい事態が生まれることは、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治