これも巡り合わせなのですが、もっと平時だったら自分の掲げる政策はいろいろあったと思うのです。少なくとも私の立場では、タイミング的にやらなければいけない状況が押し迫っているテーマがあったのです。その中で特に社会保障と税の一体改革については、あえて政治生命を賭けるということも言いました。政治家が政治生命を賭けるということは、相当にできなかったときには何をするのだ、どうするのだと問われる厳しい状況なのですが、あえて退路を断ち切ったというのは、もうそういう状況だったのです。
なぜならば、日本が国家財政において、いろいろな資料を明治の時代からずっと記録してきていますけれど、税収よりも借金に依存する国家経営というのは、昭和21年の敗戦直後1回経験しただけなのです。大恐慌のときも日露戦争のときも財政は厳しかったですけれど、税収よりも借金に大きく依存する、というのは過去に1回だけだったのです。
でも、リーマンショックの直後にその状況が生まれました。平成21年ですけれど、そのときに私は財務副大臣でした。そのあと平成22年、平成23年の予算を財務大臣、総理大臣として担う際に、この異常事態の中で、まず財政規律はきちっと守るというメッセージを出さないとならなかったとき、欧州の債務危機とかある中で、日本の財政の問題点にサーチライトを当てられたら、これは持たないと思いました。
ということもあって、消費税は引き上げるけれど、きちっと社会保障に当てるのだ、赤字国債ではないのだという路線を、やはり自分のときに選択をして実行しなければいけないと思ったことが大きく変わったことです。
ただこれは、2009年に鳩山さんを総理にして政権交代をしたときには、掲げていないテーマなのです。掲げていないテーマをあえて政治生命を賭けてやるということは、当然のことながらいろいろなハレーションが生まれると思いました。それで、財政を心配する人は、超党派でもいますし、メディアにもいます。学者にもいます。国民の中でも、心ある人は「このままで大丈夫なのか」と思った人はいっぱいいると思います。その人たちは味方に付けるけれども、多分一番反対が出るのは、民主党内ではないかという予感は持っていたのです。
そして、いずれの日にかは総選挙があるし、それも近づいてきているという中で、あえて国民に負担を求めるということを大上段に構えた...
すでにご登録済みの方はこちら
概要・テキスト
民主党内を敵に回しても取り組んできた「税と社会保障の一体改革」。野田佳彦が当時の想いをふりかえる。
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。