●動くヨーロッパの為替相場、連続講話のアウトライン
皆さん、こんにちは。シティグループ証券で為替相場のリサーチを担当しています高島修です。
ヨーロッパの状況が大きく動いていますので、今日はそのことについてお話をしようと思っています。
まず一つは、スイスショックです。これによってスイスフランだけでなく、金融市場や為替相場も非常に大きく動きましたので、それについてまとめると同時に、ユーロ圏においてECB(欧州中央銀行)の利下げが行われているので、その意義についても話していきたいと思います。
構成としては、1点目が、スイスショックはどういう形で起こったのか、どういう影響を持っているのかについてです。2点目として、スイスが行ってきた対ユーロ通貨固定制度(通貨ペッグ制度)についてご説明しようと思います。3点目としては、スイスショック後のユーロ安と、2015年1月22日に発表されたECBの量的緩和が持つ意義について、お話ししていこうと思っています。
●欧州金融市場と為替相場を揺さぶったスイスショックとは
まず、「スイスショックとは何であったか」という1点目のポイントからです。
2015年1月15日、スイス中央銀行(SNB)が、2011年9月から続けてきたスイスフランの対ユーロ上限レートの撤廃を発表しました。
1ユーロ=1.2スイスフランとされていた上限レートが撤廃されるとの発表により、為替マーケットでは急激なスイスフラン高とユーロ安が進みました。一時は1ユーロ=0.85スイスフランを記録するほどスイスフランの急騰とユーロの下落が急激に進みましたが、その後は安定を取り戻し、1ユーロ=1スイスフラン前後に落ち着き始めています。
一方、対米ドルの動きで見ると、SNBの決定前は1ドル=1.02スイスラン程度で推移していました。これが瞬間的に0.75スイスフランあたりまでスイスフラン高が進み、その後は大体0.85スイスフランほどで安定しようとしています。
スイスフランの上昇率についてはこの後に説明しますが、1日のうちに実に3割から4割という、記録的な上昇を見せているのです。
●通貨ペッグ制度の切り崩しを、歴史から振り返る
今回のような通貨ペッグ制度の切り崩しは、通貨が売りによって安くなる方向では、非常に多くの前例があります。近年では...