●軽視できないユーロに与えるスイスショックの影響
最後になりますが、今回は、スイスショックがユーロに対して及ぼす影響や、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に踏み切った意味などについて、お話ししていきたいと思います。
スイスフランは、欧米の投資家にとっては実に頻繁に売買されている通貨です。ところが一方で、日本の投資家にはあまりなじみのない通貨ですし、日本企業の中にも、スイスと直接的な貿易関係のあるところはそう多くありません。ですから、スイスフランのペッグ制度が終了したことによる影響は、日本の投資家にとってあまり重要ではないといえます。
しかし、その一方で重要なのはユーロに与える影響でしょう。スイス中央銀行(SNB)が従来行ってきたスイスフラン売り・ユーロ買いの介入が今後減少していくことは、ユーロが需給面で一つの支援(買い)材料をなくすことを意味するのです。このような形で、ユーロに影響が出てくることが一つ考えられます。
●多様化の減少から豪ドルなどに下落圧力の可能性
二つ目は、豪ドルをはじめ、その他の通貨に下落圧力が加わる可能性があることです。これは正式に確認されていないため、市場の中での一般的な見方になりますが、SNBはスイスフランを売ってユーロを買い、買ったユーロの一部を、米ドルや円、英国ポンド、豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドルといった通貨へと多様化してきたと言われています。だとすると、SNBがユーロ買い介入を減らすことは、結果的にユーロを売った後の米ドルや円、英国ポンド、豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドル等の各種通貨への買いを減らすことになります。
当然のことですが、ドルや円、英国ポンドあたりは市場規模も比較的大きいことから、それに伴う通貨安圧力はそれほど受けることはないでしょう。しかし、豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドルあたりになると、SNBの行ってきた買いがなくなることにより、意外に下落圧力を受けるのではないかという心配があります。
●ECBの量的緩和導入において気になる不安材料
次に、欧州中央銀行(ECB)が今回導入した量的緩和ですが、これは約1兆ユーロの規模になっています。日本円にすると140兆円から150兆円と、日銀が行っている緩和を上回りかねない状況です。
基本的には、月々600億ユーロの資...