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我々の生命を害するものが、我々の生命を強くする

反生命論(6)生命は、敗北によって輝きを増す

執行草舟
実業家
概要・テキスト
「私を殺すものが、私を強化しているのだ」と、フランスの哲学者ミッシェル・セールは著書『人類再生』で説いている。これは人間生命の本質で、敗れることによって生命は輝きを増すということである。この方程式の在り方を、文学者の保田與重郎は「偉大なる敗北」と言った。もしくはスペインの哲学者ミゲール・デ・ウナムーノの言葉によれば、「ドン・キホーテは〈すべてに敗れることによって世界を救済した〉」のだ。今回は「生命は、敗北によって輝きを増す」という反生命論を解説する。(全10話中第6話)
時間:11:16
収録日:2024/05/16
追加日:2024/08/30
カテゴリー:
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≪全文≫

●ミシェル・セール「私を殺すものが、私を強化しているのだ」


 6番目です。「生命は、敗北によって輝きを増す」。基本は「人間生命とは何か」ということです。1番目、「反生命が真の生命を生み出す」。これは「反生命」が、真の人間の生命を生み出すということです。我々が生命ですから、「人間」でも「反物質」でも同じです。

 ミッシェル・セールという、フランスの有名な哲学者がいます。彼が我々人類の未来を予測しています。未来学者としても超一流の人です。私は彼も好きで、ずっと哲学書を読んでいます。『人類再生』という本を20年以上前に書いていて、私の愛読書ですが、そこに素晴らしい言葉が出てきます。

 「私を殺すものが、私を強化しているのだ」。

 このことが真にわかるかわからないかが、我々人類の行く先を決定するということが、『人類再生』に書かれています。

 これは、先ほどの私の理論で言うと、人間の生命が反発エネルギーによって成り立っていることがわかると、わかるのです。

 人間だけが認識しているということですが、例えば反発エネルギーの中でも、本当に原始的な免疫機構です。免疫機構は、動物にも全部あります。ただ動物と人間の違いは、動物は「免疫機構があるから自分が生きている」ということを認識していません。認識できないのは、認識論的に言うと、ないのと同じです。

 ところが、我々は、少なくとも免疫機構によって自分が生きていることを知っています。この「知っている」ことが重要なのです。

 これは反発です。我々を殺すもの、つまりバイ菌がどんどん入ってくる。それを我々の免疫機構が殺す。殺すことによって、我々は生きている。こういうことが、人間が生きていくことの真実だとわからなければダメということです。「免疫機構によって生きている」という認識に基づく我々の魂的な活動も含めて、すべてがそうだということです。

 どのようなことも全部、あらゆる反対の何かが入ってくる。それに対する、我々の魂からの反発が出る。反発によって、人間としての活動が生まれてくる。これは生命でいえば、免疫と何も変わらない。それをわかってほしいということです。

 この免疫機構から来る人間の働きが、反生命です。我々の生命論は、自分が「健康でいたい」「楽をしたい」ということです。でも、...
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