テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
Facebookでシェア Xでポスト このエントリーをはてなブックマークに追加

生を殺すものは死せず、生を生かす者は生きず

反生命論(3)殺生者不死、生生者不生

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
世界の大宗教は「人間の救い」を唱えているが、その内容を研究していくとすべて「魂のために命を捨てなさい」という教えである。だから、「反生命論」は人間の歴史を意味する。武士道や騎士道も、自分の名誉や「義」を貫けない場合は命を捨てて訴えた。これは生命現象と魂の現象が反発関係にあるからで、歴史に名を残した人は反発エネルギーによって事を成した。今回は、大正・昭和期の哲学者・田辺元の『種の論理』、中国は春秋戦国時代の哲学者・荘子の言葉などを取り上げながら、「反生命論が真の生命論」であることについて解説する。(全10話中第3話)
時間:12:51
収録日:2024/05/16
追加日:2024/08/09
カテゴリー:
≪全文≫

●宗教はすべて「魂のために命を捨てろ」という教え


 次に第3項目、「反生命論が、真の生命論である」ということをご理解いただきたいと思います。

 「反生命論」で「反生命が、真の生命」というのは矛盾に聞こえるかもしれません。でも反生命論こそが、真の生命論であることを解説したいと思います。

 まず第1番の「真の人生論はすべて、生命を捨てることと生命のはかなさを説いている」です。世界の大宗教を見ると、すごくわかりやすい。大宗教は「人間の救い」を言っています。キリスト教仏教イスラム教もヒンズー教も、全部そうです。ところが内容を研究していくと、全部「魂のために命を捨てろ」という教えなのです。だから「反生命論」は、今、私が発明してしゃべっているのではありません。人間の歴史なのです。

 「人間を助けるために生まれた」「本当に人間を救うために生まれた」といわれるキリスト教仏教などの大宗教が、「魂のためには自分の生命すら捨てなさい」と説いている。これがすべての教えであり、歴史上すべての本に書かれている事柄なのです。

 『源氏物語』を読んでいると、「大和魂」(やまとだましい)という言葉が出てきます。「大和魂とは何なのだろうか」を読みながら考えました。子どもの頃です。わかったのは、なにも「勇ましい」というようなものではないのです。いざとなったときに、自分の命を国のため、あの当時のことですから皇室や天皇陛下のために捨てられるかどうか。命を捨てるだけの覚悟を持っている人を「大和魂のある人」と言っていたのです。それが平安時代に書かれた『源氏物語』の中に、もうあるのです。

 人間というのは、大和魂さえあれば(いい)。普段――今の人は怒りますが――当時の貴族はみんな女遊びばかりしています。贅沢三昧している。酒ばかりくらっている。これらを当時の人はあまり問題にしていません。あのような身分のいい公卿の、家柄のいい人たちは、いざとなったら自分の命を国のために捨てられる人と思われていたからです。そのような大和魂を持った家柄の系譜だと思っているから、尊敬されているのです。

 大和魂で一番重要なのは、普段は飲んだくれでもいいのです。いざとなったときに国のために命を捨てられる。簡単に言えば、こういうことです。

 『源氏物語』によると大和魂は、勉強...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。