アメリカと一口で言っても、さまざまな様相のアメリカがあるが、アメリカがよかったのは1960年代前半までである。例えば民主党の移民政策をみればわかるが、あれは国を潰しかねない愚策だ。それがわからないのが金融資本主義の恐さで、短絡的に「自分が儲かればいい」としか考えていないからではないか。また、アメリカでは救急車を呼ぶのに相当のお金がかかり、糖尿病にでもなってしまったら入院費用は莫大で、どんな金持ちでも財産を失いかねないというのが現状である。一方、国民皆保険で誰でも手厚い医療を受けられる日本はまさに「天国のような国」だが、日本人は誰もわかっていないのである。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
≪全文≫
●理想のアメリカは1960年代前半まで残っていた
―― 上のほうを除けば、普通の日本の庶民のレベルは世界的にものすごく高いと思います。
執行 そうでしょうね。
―― それがドル円換算で「アメリカ人の価値の半分しかない」とか「3分の1しかない」とか、それはあり得ないでしょうと。すると、統計数字の作り方がそもそも間違っているのではないか。
対内直接投資などと言っていますが、1200兆円ぐらい個人金融資産があり、企業の内部留保も500兆円ぐらいある。圧倒的に金を持っているところで金を回す仕組みを考えたほうがいい。海外の人に来てもらって、企業を買ってもらわなくてもいいのです。
執行 全くです。
―― それを大真面目に、コンプライアンスなどをきちんとして「買ってくれ」という感じで(株式の)持ち合いを解消させてみたり。そういうアホくさいことをやっている。先生が言われるように、よくわかっていない人たちが暴走してやる気を示すと、ろくなことにならないのです。
執行 これは2000年ぐらい見てそうなのだから、かなり確かです。
―― 本当にそうだと思います。アメリカは、ものすごくいろいろな種類のアメリカがあるのです。「おまえの言っているアメリカは、どこのアメリカなんだ」と私は聞くのです。「じゃあ、おまえの知っているアメリカは誰なんだ」と。そして「どういう背景なんだ」と。だから、アメリカは一つしかないような感じだけれど(そうではないと)。
執行 私が知っているアメリカは、前から言っているように一番キリスト教信仰が深くて、中西部のハートランドです。それこそ先ほど言われた、外国に興味がない。良いか悪いかではなく、キリスト教信仰が深くて、お節介で、民主主義的で、自分たちを最高だと思っている。そういう意味のアメリカです。
ただ、いいところは、(先ほど)言ったホッファーのように人生を全部、自己責任だと捉えている。そういうアメリカです。
―― 先生の(言われる)アメリカは1950年代~1960年代前半まで残っていたのです。
執行 残っていると私は思っていました。知り合いでも何人かいますから。でも、今は全然ダメということですね。
―― 変わりました。だからアメリカでいいのは、上のほうの一部の人たちです。知識人には飛びぬけて優秀な人がいます。そこは面白いですけれど、ミドル層だけ比べてみたら日本のほうが...