●分裂に分裂を重ねる社会の姿
執行 (アジア人への)差別は、中心部のハートランドのほうがひどいのではないですか。
―― 戦前からアジア系移民が一番来ていたのは西海岸のカリフォルニアなので、そのときに起きた差別が今もずっと続いています。
執行 今でもひどいですか。
―― 西海岸は本当にシビアな状況です。
執行 信じられないことですね。
―― スタンフォード大学の周りのエリアは安全でしょう。
執行 スタンフォード大学はサンフランシスコの近くですね。
―― サンフランシスコから車で1時間ぐらい。そこは高級エリアで(サンフランシスコと比べると)ものすごく安全でしょう。
執行 でも、スタンフォード大学も滅びていくのではないでしょうか。サンフランシスコが全然ダメだということは。
―― 今のところはサンフランシスコと全く無縁の土地にしています。要するに家賃がめちゃくちゃ高いのです。だから普通の人は、あのエリアに住めません。
執行 学生街でも(家賃が)高いのですね。
―― スタンフォード大学になると、授業料だけで10万ドルなので大体年間1200万円します。生活費やアパートメント代を入れたら、大体2000万円ぐらいです。
執行 普通の人は入れませんね。
―― 1年間に2000万円ないとスタンフォードに通えないのです。
執行 アメリカは幅がすごいということですね。
―― そうです。ものすごく幅が広い。
執行 アメリカのどこと付き合うか。
―― そこを完全に握った上で、彼らの利益は侵さないような形でいくことが大事です。
執行 その「利益を侵さない」には、魂も入ります。
―― そうですね。
執行 アメリカは非常に民主主義的な一枚岩で、非常に強い国でしたが、今日ずっと話を聞いていると、もう分裂に分裂を重ねているということですね。だから、南北戦争をしなくても、もうわかれている。
―― ものすごくわかれているし、どの部分とどういう角度で付き合ったかによってアメリカ観は全然違うと思います。少なくともお金を持っていて、いいホテルに泊まれる人たちであれば、そのようなエリアしか見えない。けれど、好奇心があって、4キロ四方を歩いたり、聞きまくったりすると、いろんなアメリカが出てくる。全然違います。だから、見る場所によって(違う)。
執行 それはある意味、民主主義国家の反対です。自分の行っ...