●「全て自己責任」と考えた1930年頃のアメリカ
執行 私はアメリカの金持ちを見て、うらやましいと思ったことは一回もありません。アメリカが何より素晴らしいと思ったのは、今(第3回で)言ったエリック・ホッファーです。
現実に生きていた人が言うことだから、確かです。どんな貧乏人も「人生は全て自己責任とみんなが言っている」と。「敗残したのも俺の責任」「病気になったのも俺の責任」と全員が言っていたと。「人のせい」はもちろん、「国のせい」などと言う人には一人も会ったことがないと自伝で言っているのです。私は人類史上、かつてない理想郷だと思います。金持ちのことなんか、どうだっていいのです。要は人間の生き方だから。
―― 人間性や精神性ですよね。
執行 国民が全部、全ての生活が自己責任だと思える国家は、すごいではないですか。こういう人たちが真の中流だと思います。全てを自己責任として行う。アメリカは、1930数年の時代はそうだったのです。そのアメリカ民主主義の頂点のときに、日本は戦争してしまった。あれは大変なときにしました。
―― あり得ないですね。
執行 同じ戦争をするのでも、もう少し国がダメになってからにすればよかった。
―― 待っていればよかった。何だかんだ言いながら。
執行 あと10年も待てば、だんだん落ちてきますから。ベトナム戦争の段階で、もうアメリカはベトナムに勝てません。なぜかというと、国の中の戦争反対運動です。大東亜戦争のときはその反対で、国民全員が「日本人憎し」でかたまっていた。だから、日本と戦争したときとベトナムのときでは逆です。
―― 逆ですね。
執行 あれらは20年ぐらいしか差がないのです。
―― そこを待てるかどうかが、やはりリーダー層の胆力ですね。
執行 これはどうしても指導者です。国民はわかりませんから。
―― そこのレベルですね。
執行 日本の外交は、信じられない(ぐらい)下手なのです。だから日本人は、やらないほうがいい。歴史をひも解くとわかりますが、日本は神代から(そうです)。白村江の戦いではないけれど、天智天皇のやる気がすごいのです。立派な天皇といえば立派な天皇です。
でも日本的なものは全部、天武天皇から始まっています。そして、壬申の乱で(天智天皇の子・大友皇子)に勝ちました。彼は天智天皇の弟です。
天智天皇は秀才でやる気があ...