M&A成功の法則~ワタミとタクショクの事例に学ぶ
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両社がハッピーになるM&Aの典型的な成功事例
M&A成功の法則~ワタミとタクショクの事例に学ぶ
経営ビジネス
分林保弘(株式会社日本M&Aセンターホールディングス 名誉会長)
優れた技術やサービスを持つ中小企業にとって、「戦略としてのM&A」は魅力的である。そうした相思相愛のM&Aの好事例、弁当宅配のタクショクとワタミのM&Aの舞台裏を、仲人役の分林保弘氏が大いに語る。
時間:6分54秒
収録日:2014年6月23日
追加日:2015年8月6日
≪全文≫

●M&A成功の好事例。両社の経営者の決断力がカギ


── ワタミとタクショク(現ワタミタクショク)の例は、M&Aがうまくいった成功事例中の成功事例と言えますね。

【解説】
2008年7月、株式会社タクショク(本社長崎県、1978年創業)の全株式をワタミ株式会社が取得し、ワタミグループの一員となった。2009年3月、ワタミタクショク株式会社に社名変更、11月に東京都大田区に東京本社を新設。

分林 ええ、本当に、やはり両社とも経営者の決断力が素晴らしかったと思います。

タクショクさんは、もともと長崎を拠点とする会社で、九州を基盤に、高齢者のために毎日夕食を配り歩く事業を展開していました。配達員だけでも3000人いました。

── 大変な人数ですね。

分林 山口県から鹿児島まで、全部毎日宅配していたのです。その当時で、そうですね、約3万食を配っていたのではないでしょうか。

── すごい規模です。

分林 年商は80億もあり、経常利益も5億近い優良企業でして、2年後には上場をと考えておられました。しかし社長は非常に頭のいい人でした。息子さんが三人いて、長男さんは税理士の資格を持ち、経営陣にも入っておられました。社長は当時66歳。2年後に上場したとして、その時には68歳、もう70歳近くになります。上場して、それから1、2年で息子さんにバトンを渡すことになる。上場した場合、われわれもそうですが、当然ながら、売り上げ1割アップとか、経常利益1割アップとか、毎年そういった要求が株主からくるのが上場会社というものです。社長は、本当に自分の息子が上場会社の社長として適任かどうかということを、まず迷われたのです。

 では上場しなかったらどうなるか。ご自身は30数歳から66歳まで、企業を大きく、工場を大きくするために、借金の個人保証を30数年間ずっと負ってこられたわけです。

── 大変なことですね。

分林 首都圏へも一部展開し始めておられたのですが、地元九州と違ってブランドがありません。単独でやって全国制覇をするのはやはり難しいと考えられて、逆にどこか大手と組みたいという意向を持っておられました。

 つまり、上場しても大変、非上場でも大変。息子さんが会社を継いだら今度は息子さんが30数年間ずっと個人保証をしないといけません。メーカーの場合は拡張するたびに個人保証せざるを得ませんから。その途中では、場合によっては倒産、...

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