テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

地方創生と社会保障―アベノミクス新戦略のポイント

アベノミクス新成長戦略のポイント(4)地方創生と社会保障改革~日本の命運を握る

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
 
島田晴雄氏がアベノミクス新戦略のポイントとして挙げる次なる主な項目は地方創生と社会保障だ。いずれも日本の将来の明暗を分ける最重要課題だが、その道は険しい。われわれは次世代のために、日本の未来のために今、アベノミクス新成長戦略を正しく理解する必要がある。(2015年1月26日開催島田塾第120回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済」より、全10話中第6話目)
時間:11:32
収録日:2015/01/27
追加日:2015/02/25
≪全文≫

●市町村数の消滅に歯止め! 地方創生は急務


 アベノミクス成長戦略の次のポイントは、地方創生です。これは、急に浮上してきた大戦略と言われていますが、一番インパクトを与えたのは、増田レポートです。岩手県知事だった増田寛也さんが、実は、2014年5月の日本創成会議に、こういうレポートを出しました。

 今、日本全国には1800弱の市町村があるのですが、現状、やはり全国各地から東京に人口がじわじわと動いているのです。その人口移動のパターンを前提に2010年を起点にして、国勢調査を使って2040年を予測すると、子育て世代、子を産める世代となる20代と30代の女性の比率が5割を切る市町村が、896になると言うのです。子育て世代の女性比率が5割を切ると、結婚などの関係からいろいろ推察して、そういう地域はもう自然に縮小する以外に道はなくなり、あと20年もすると本当に消滅してしまうのだろうと思います。


●出生率引き上げで人口1億人を目指す

 
 この前、私が学長を務める大学との関係で青森の弘前市に行ったのですが、非常に立派な町なのですけれども、弘前は「消滅都市」と予告されているのですね。何しろ896もの市町村が消滅ですから、これは大変なインパクトを生んで、さすがに安倍政権も座視できなくなったのです。何とかしましょう、地方創生だ、と言い出したわけです。
 
 そして、経済財政諮問会議でだいぶ元気のいい意見が出て、日本の人口を、2060年には1億人に維持すべし、と提言しました。現状はどういうことになっているかと言うと、2015年で1億2700万人くらいです。10年単位で計算すると、50年後には実は8600万人になるという計算になっているのです。

 これを1億人にすると言って、どうしたらできると思いますか。今の出生率は1.43ぐらいですが、これを2.07まで引き上げなければいけないのです。絵に描いた餅のようなものですけれども、真面目にこういうことを議論しているのです。


●地方創生の「長期ビジョン」と「総合戦略」

 
 とにかく、人口減少対策をして地方創生をやりましょう、ということになって、 石破茂さんが地方創生担当大臣になり、2014年9月に地方創生本部が設置されました。また、地方創生法が2014年11月に出来ました。そして2015年1月、国が「長期ビジョン」を発表しました。同時に「総合戦略」を描いて、一部公表されていますが、例えばこのようなことです。

 「長期ビジョン」では、「子どもを産みたい、持ちたい」と言っている若者たちの希望が実現した場合、出生率を全部足すと1.8になるのだから、それを実現させましょうとか、地方に雇用機会をつくるので、地方に移転した企業には税制優遇をします、などといったことを盛り込んでいます。「総合戦略」では、若者向けの雇用を地方に30万人創出すると言って、そのために、あれこれ合わせて1兆円ぐらいの付加的な予算を組んでいるのです。

 石破さんは、「これは予算のばらまきではないですよ」と強調して、こう言っています。つまり、地方にいろいろと意見を出させると、いろいろと重複するけれども、それを中央で全部集めて、重複がないようにしてメリハリを効かす、と一応は言っているのですが、地方の方ではもう全部お金をもらえるものだと思って、シンクタンクなどに頼んでいる、そういう状況です。よくあるように、表紙だけ違うけれど中身はほとんど同じというプランが今、どんどん出回っているのです。石破さんは、それを選り分けると言ってはいますが。


●2050年国民負担率70パーセントの見積もり

 
 社会保障改革はどういうことになっているかというと、こちらもなかなか大変です。今、日本の高齢者人口は全体の25パーセントです。所得に対する税金と社会保障の負担額の合計の比率を、国民負担率と言います。

 社会保障は出入りができませんので、税金と同じで支払う義務があります。この二つを合わせると、大体所得の4割になるのです。500万円の所得の方は、手取り300万円にしかならない。これがどうなって行くのかというと、2050年には高齢化率40パーセントになるので、大和総研がいち早く数年前に概算したところによると、国民負担率は73パーセントになるそうです。これはどの機関が見積っても負担率70パーセント前後になります。


●大変な負担率を追うしかない次世代

 
 このような負担率でどうするのですか。500万円の所得で手取り170万円ということでしょう。暮らせるわけがありません。江戸時代に、半分を年貢として納めさせ、半分を農民の取り分とした「五公五民」という租税の徴収方法があり、今、政府ではこの「五公五民に」と言っていますが、あとの22、3パーセントを...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。