●先進国中、最も労働生産性の低い日本
次にお話しするのは、働き方の改革についてです。これは、農業と並んでもう一つの大きな岩盤です。どういうことかと言いますと、日本人はよく働くと言われていますが、皆さん知っていますか? 日本の労働生産性は先進国の中で一番低いのです。いつそういうことになってしまったのかというと、この20年ぐらいずっと落ちているのです。
その背景にはこういう理由があります。賃金が労働時間で決まるようになっているからです。これは、日本の頑迷な労働法がそうなっているのですね。世界の労働法は随分と違います。産業によって労働法が違っていたりしますし、主要国では、ホワイトカラーは労働法を適用していません。日本だけ、忠実にありとあらゆる労働者に、ホワイトカラーから何から全部含めて、19世紀的工場法、つまり労働時間で全て決めるという労働法になっているのです。これは珍しい国です。
これも戦後改革なのですね。民主化の一環だったのだと思います。要するに、身分差別をなくすということが全面に出て、こういった労働法になったのでしょう。
●調子により差の出るホワイトカラーの生産性
製造業などに従事する労働者は、時間で測るこの労働法が適していると思います。あるいは、コンビニのレジのように、時間給で働いている人はこの方法が適していると思います。
ただ、こういう職種の労働者、特に製造業は、今、全労働力の1割まで行っていません。とうとうそこまで来てしまったのですね。あとの9割はどういう人かというと、企画や研究、開発やら営業、流通だの、そういう職種の人たちなのです。基本的にはホワイトカラーということです。
NEC(日本電気)が、ある時、同じグループで生産性の比較をしたことがあるのですが、ホワイトカラーというのは、調子に乗っているときと乗っていないときで、25倍も生産性が違うということがあり得るのだそうです。研究職などは全部そうですが、恐らく、金融も同じだと思います。
●創造的仕事ができない仕組みの日本
こういう職種には、調子が乗っているときに給料を払えばいいわけです。調子のいいときに1時間働いて、いい成果を上げればいいわけですね。それは日本では出来ないスタイルですが。
例えば、アメリカなどでは「エグゼンプト(exempt、時間外勤務手当から除外する労働者)」と言って、ホワイトカラーには労働法を適用していないのです。アメリカにはホワイトカラーが全労働者の3分の2ほどいますけれど、労働法の適用がエグゼンプトで、除外してしまいます。基本的にホワイトカラーというのは、やがて経営者になりたい人なわけですから、労働者ではないのです。
要するに、成果で稼ぐ人やクリエイティビティで稼ぐ人を、時間で測るといった愚かな方法があるのか、ということなのですが、日本は民主化ということで、それを忠実に戦後70年維持しているのです。これが今、全部裏目に出ています。
諸外国のホワイトカラーの働き方はそうなっています。日本はなっていないので、世界で一番、生産性が低くなった。これを変えよう。つまり、成果で払うということを安倍晋三首相が何度も何度も言っているのですが、状況としては大変です。
もう労働省は寄ってたかって押し戻しにかかり、労働組合も全部、「そんなことをしたら奴隷労働になる」と言う始末です。何が「奴隷労働」ですか。要するに、仕事の中身が規定されていないのがホワイトカラーと言うのです。つまり、クリエイト、創造なのです。そのクリエイションが出来ない仕組みに、日本はしてしまったわけですね。ですから、生産性は本当に低いです。これを変えなければいけないということです。
●解雇の出来ない仕組みも戦後民主化の悪影響
それから、日本の企業は、なかなか解雇が出来ないのです。簡単には切れない。この日本の解雇法制はひどいもので、「整理解雇」といって、工場など職場がなくなったら解雇ができることになっていますが、つまり、四条件というのを満たさないと駄目なのです。改正にはベストを尽くしましたが、その中に一条件が入っていて、新入社員を雇ったらこの四条件は満たさないことになります。ですから、新入社員を一人雇ったら、たとえ、不要な人材を抱えていても解雇できないのです。
指名解雇はもっと厳しいです。指名解雇は、その人の成績が悪いから解雇するということですが、「指名解雇をする」と経営者が言うと、今の状況では、経営者の側が解雇されてしまうと思います。
なぜならば、これが戦後の問題、つまり、民主化が原因なのです。戦後当時、裁判官は皆、ほとんど共産主義、平等主義の持ち主でした。そういうソビエト、ロシアの思想で勉強してきている人たちなので、と...