●第一次大戦後、欧州通貨危機は20年ごと
二つ目のテーマは、欧州通貨危機の歴史です。前回お話しした部分と若干重複する部分もありますが、過去を振り返ってみると、欧州はおよそ約20年周期で深刻な通貨危機に陥る傾向にあります。
発端は1914年、今から100年ほど前で、ヨーロッパを中心とした第一次世界大戦が勃発した年です。この時、イギリスが世界の覇権国家で、世界の通貨制度は金ポンド本位制でした。しかし、金ポンド本位制が、第一次世界大戦の勃発によって崩壊する事態となりました。
次に、第一次世界大戦の終了に伴って、イギリスは再び金本位制に復帰することになりましたが、1931年に、イギリスはまた金本位制から離脱してしまいます。その背景にあったのは、1929年のニューヨーク株の暴落に端を発する世界大恐慌の発生でした。
その後、第二次世界大戦を経て、1940年代の後半に、英国ポンドの切り下げが行われました。この背景には、1945年に戦後体制としてブレトンウッズ体制が誕生したことがありました。ブレトンウッズ体制とは、金ドル本位制であるといっていいと思います。要は、新しく世界の覇権国家となったアメリカのドルを中心とした国際通貨制度が誕生したわけです。これはイギリスからアメリカへの覇権のシフトであり、ポンドからドルに基軸通貨が変わった象徴的な出来事だったわけですが、その後、英国ポンドが切り下げられていくという動きが、1940年代の後半に起こっています。
その次は、1960年代の終盤です。ヨーロッパで大規模な通貨投機が行われ、イタリアリラやフランスフランを売ってドイツマルクを買う動きが起こりました。これは、その後、考えてみれば、1971年の金ドル交換停止(ニクソンショック)の前哨戦として、そういった動きがヨーロッパで起こっていたと考えられます。
その後、ヨーロッパは再び比較的安定した時期を迎えました。しかし、1990年代の前半になると、前回お話しした欧州通貨危機が勃発しました。
この時は、欧州を通貨統合しようという動きが強まっていたわけですが、逆の動きが出てきてしまったのです。当時、欧州為替相場メカニズム(ERM)というものがありました。しかし、イタリアリラや英国ポンドがそれから離脱する動きが出てきました。かの有名なジョージ・ソロスをはじめとするヘッジ...