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2008年以降のユーロ下落には3つの局面がある

ユーロの十字架とギリシャ問題(1)ユーロ安の背景と今後の見通し

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
ユーロ安が止まらない。そして、再発するギリシャ問題。欧州とユーロに何が起こっているのか。今後どうなるのか。シティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏が鳥の目・虫の目で語る「ユーロの十字架とギリシャ問題」シリーズ第1話。
時間:11:47
収録日:2015/02/19
追加日:2015/02/25
タグ:
≪全文≫

●金融緩和とギリシャ問題の再発でユーロ安


 シティグループ証券の高島修です。よろしくお願いします。最近、ユーロがずいぶん値を下げていて、ギリシャ問題がまた再発している状況です。そこで今回は、「ユーロの十字架とギリシャ問題」というテーマで話をしていきたいと思います。

 最初の項目として、ユーロ安の背景から始めさせていただこうと思います。

 昨年(2014年)半ば頃、ユーロドル相場は、1ユーロ1.4ドル台前後で、比較的ユーロが高い状態にありましたが、今は、足元1ユーロ1.1ドル台ぐらいまで値崩れしてきています。これは、背景として、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和が行われていることが一つと、また、ごく足元においては、ギリシャ問題が再発していることもあろうかと思います。

 ユーロの長い動きを見てみますと、1999年に統合通貨「ユーロ」が導入された後、ユーロは2年間ぐらい下げ続け、2000年の10月には、1ユーロ0.8ドル台まで値崩れしていました。

 そこからは、ユーロ高というより米ドル安という側面もあったわけですが、2008年のリーマン危機が起こる頃まで、ユーロ高が進みました。その時は、1ユーロ1.6ドル台ぐらいまでユーロが上昇する動きが出ていました。

 足元に至るまでのユーロの下げは、この2008年の1.6ドル台からの下落ということになります。


●近年のユーロ下落には三つの局面がある


 2008年以降のユーロの下落には、私が見るところ、三つの局面があると思われます。

 まず第一の局面は、2008年から2009年にかけてで、リーマン危機の米ドル高という側面があります。実は、米ドルは、大体深刻な危機に陥ると反発する傾向があります。リーマン危機の後のドルの反発が典型例です。こういったことがなぜ起こるかというと、世界中でいろいろな投資家や企業が米ドルを調達しているためで、危機になって米ドルの調達が難しくなってくると、いわゆるドル不足問題が発生して、ドルが反発する傾向があるのです。いずれにせよ、この2008年、2009年のドル高ユーロ安は、それまでユーロが上昇していた分のアンワインド(巻き戻し)としてユーロが反落して、ドルが反発した、という側面が強かったと思います。

 第二局面は、2010年のギリシャ危機、欧州ソブリン危機が起こったあたりで、大体1.5ドル台から下がっていく動きが出てきました。これは、ギリシャ危機、欧州ソブリン危機などによるユーロ安だったと思います。

 こういった状況は、2012年にいったん小休止となり、その後ユーロは底堅く推移していました。ところが、昨年の半ばに1.4ドル台でユーロの天井を付けた後、足元まで下がるという現象が起こっています。これは、ファンダメンタルズに基づくドル高ユーロ安だと見ています。これが第三局面です。

 ですから、第一局面は、2008~2009年の危機の米ドル高。第二局面は、2010~2011年ごろの、欧州の危機によるユーロ安。そして、第三局面は、この半年近く続いている、ファンダメンタルズに基づくドル高ユーロ安。そういう動きだと私は考えています。


●ユーロドルは米欧の金利差に基づいて動く


 ユーロドルが大体どういう動きをするかというと、アメリカとヨーロッパの金利差に基づいて動く傾向にあります。

 ユーロとドルの購買力平価(物価格差を考慮した上での為替相場の適正水準)をユーロとドルで見てみると、今は大体1ユーロ1.3ドルぐらいのところに適正水準があると計算できます。この購買力平価からのユーロドルの上振れ・下振れは、大体アメリカとドイツの金利差によって説明が可能なのです。

 こういった中、過去2年くらいは、アメリカの景気が回復する一方で、ヨーロッパの景気は低迷しています。そして、アメリカの金利がじわじわと上昇する中、ヨーロッパでは、むしろ金利が過去最低水準まで下がりました。そのため、この金利差の面からドル高ユーロ安圧力が加わっているということが非常に大きなバックグラウンドだと思っています。

 ただ、2013年から2014年の前半頃までは、比較的ユーロが底堅かったのです。この間、アメリカとドイツの金利差は、ドル有利・ユーロ不利に変化していたわけですが、そんな中にあってもユーロは底堅い推移を続けていました。

 この間、ユーロが底堅かった理由は二つあります。一つは、ユーロ圏の経常黒字が増えていたことです。もう一つは、その頃、スペインやイタリアの国債利回りが高止まっていたことです。ちょうど欧州ソブリン危機が収束する兆しが強まる中、イタリアやスペインの利回りが高いということで、世界中のリスクマネーが、こういった欧州周辺国の国債市場に流入していました。そういう動きが、アメ...
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