会計検査から見えてくる日本政治の実態
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マイナンバーが生かせない…「三層分離」という大変な問題
会計検査から見えてくる日本政治の実態(4)「給付金」の教訓
田中弥生(東京大学客員教授/元・会計検査院長)
コロナ禍で行われた一人あたり一律10万円の給付は記憶に新しいが、それ以降もさまざまな世帯を対象に、さまざまな給付金が支給された。しかし、給付金の実態を見ていくと、自治体の事務負担やその背景にあるワークフローの煩雑さなど、あまりにも多くの問題が浮上してくる。にもかかわらず、政治の側はロジスティックスを深く考えることなく、その時々の流れのなかで給付金を決定し、現場は常に翻弄されていく。では、行政をどのように変えていけばいいのか。マイナンバー制度や業務のデジタル化などの課題を解説する。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分28秒
収録日:2025年4月14日
追加日:2025年8月1日
≪全文≫

●「10万円給付」以降の給付金の実態


―― 続きまして。

田中 はい。トランプ関税問題で、いわゆる中小企業だとか、あるいは子育て世帯、低所得世帯、あるいは国民全般にどういう手当てをしたらいいのかという議論が政治の間でも頻繁にされていますし、それがまた報道されています。その中の選択肢の1つとして、「給付金」の話が盛り上がっています。実はこの給付金も教訓がたくさんあります。ぜひ皆さんに知っていただきたいことがあります。

 会計検査院では、令和2年から令和4年に配布された9種類の給付の全容を明らかにしました。皆さん、問答無用で1人あたり10万円の給付金を覚えていらっしゃいますか。

―― あったことだけは覚えていますね。

田中 あの後、また続いているのです。それが9種類あるのです。その金額が4兆円を超えていまして。この動向を調べようと思ったのが2024年の報告になります。

 この図です。これが9種類の給付金を示したものです。いわゆる子育て世帯向けの給付金、児童手当が対象になっているところです。そこの給付金もありますし、ひとり親世帯のための給付金、低所得世帯向けの給付金とか、いろいろな種類の、またいろいろな条件を持った世帯の方たちに配っています。金額もかなり幅がありまして、1万円から10万円ぐらいまで幅があるものです。

 会計検査院で調べたところ、その金額は予算としては5兆2000億円ですが、実際に給付金として国民に渡った額は4兆2700億円です。

―― ここも「配り切らなかった」ということになるわけですね。

田中 望まなかったところもあるでしょう。それから、あまり知られていないのですけれど、この給付金は9種類全てが臨時なのです。そして、実際に配る作業をしているのは自治体なのです。「基礎自治体」と呼ばれている市役所や区役所は国に代わって臨時に作業をしますから、国から事務費が手当てされています。それも合わせると4兆6000億円ぐらいになります。

―― なるほど。ここで見るとその事務費が1300億円かかっているということになるわけですよね。

田中 そうですね。それでも足りたのかなというところは、いろいろ課題はあるのですけれど。

―― なるほど。


●煩瑣な「申請勧奨...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治