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「工場」ではなく「市場」としての中国で勝負!

中国ビジネス成功のカギ(1)政冷経熱から政涼経温へ

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
2010年代の中国市場は、千載一遇のビッグ・チャンス。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏の解説と数字により、展望は十分理解いただけたと思う。しかし、日本企業にとって中国はなかなか攻略しにくいこともまた、事実だ。黄金郷で勝ち組に入るために、まずは概況をおさらいしてみよう。(全15話中第12話目)
時間:05:55
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/26
≪全文≫

●誰が何をどうしてももうかった“政冷経熱”時代


 さて、中国市場が黄金時代とはいうものの、この市場を生かした中国ビジネスで成功するのはなかなか難しい、と考えている日本企業が大多数だと思います。

 どうしてこんなに大きなチャンスがあるのに、日本の企業がなかなか成功できないのかというところは、非常に難しい課題です。世界で戦えるグローバル企業はもちろん成功していますが、成功できる企業は、ほんの一握りなのです。

 2005年以前、小泉内閣時代には、政治的には小泉純一郎総理の靖国参拝により日中関係がやはり悪い局面を迎えながらも、当時は中国市場へのラッシュが起きていて、“政冷経熱”と言われました。

 当時は、中国の安くて豊富な労働力を活用して中国で生産すれば、日本に持ってきても欧米に輸出しても、どうやってももうかるというのが、中国市場の特徴でした。


●「工場」から「市場」へ。中国の位置付けが転換


 しかし今は、もうそういう時代ではありません。中国で生産したものを日本に持ってこよう、欧米に輸出しようと思っても、すでに中国の生産コストは高く、人民元も切り上げられているため、あまり採算は取れなくなっています。中国の安くて豊富な労働力を使っていた企業は、すでにASEANの方にシフトし、チャイナ・プラス・ワンにシフトしているのが現状です。

 逆に、いま中国にどんどん投資を増やしているのはどんな企業かというと、中国のマーケットを狙っている企業です。つまり、かつては中国を工場と見ていた日本企業が、今は中国を市場と見ていると言うことができます。

 中国を市場と見る企業にとって、相手(輸出先)は中国マーケットそのものですから、そこにどんどん参入してくる世界中のグローバル企業と戦う必要があります。

 世界中の優秀な超一流企業と十分戦っていけるところだけが、中国の中で生き残れます。日本企業の中でも、平均的なところでは、欧米や韓国・台湾の最も優れた企業との戦いには、なかなか歯が立たないのが実態です。


●1、2割しか勝負できない“政涼経温”の時代へ


 ざっくり言って、日本企業のうち1、2割はまだ何とか勝負できるものの、8、9割の企業は中国ではなかなか歯が立たない時代になってきています。

 かつては誰が行っても、ある程度はもうけられた。今は、本当にグローバルで勝負できる企業だけはもうかるけれども、それ以外の企業はなかなか商売しづらい時代になってきていると言えます。

 そういう意味では、今の中国のビジネスは、企業間のばらつきが非常に大きく、まだら模様です。以前のように、全員がもうかる「“熱”の時代」にはなりません。一部の企業は非常に大きな収益を上げますが、大半の企業はなかなか収益が上がらない状況で、全体を見回してみると“熱”ではなくて“温かい”程度です。

 一方で政治の方は、冷え切った時代から少しずつ改善していますので、せいぜい“涼しい”ぐらいになってきています。今後は、政治は涼しく、経済は温かい「“政涼経温”の時代」に入っていくというのが、日本企業にとってのこれからの中国の存在ではないかと見ていくことができるわけです。


●勝ち組と負け組に二極化する日本企業


 では、その中国ビジネスで、どうすれば勝ち組であるトップの1割から2割の企業に入れるのか。もっと言えば、その割合を、2割から3割、4割と、日本企業がどんどん比率を増やせるようになるのかということです。

 今、中国で成功している企業の特徴を見ると、これは真のグローバル企業の特徴を備えています。つまり、現地化を進め、権限移譲を十分やり、そして、本社の首脳部の意識改革が現地化と権限移譲をどんどん促進している企業です。そういう企業は、迅速かつ的確な意思決定を行い、リスクを克服して、持続的に収益を拡大しています。

 一方、負け組の企業はというと、従来型の内向き経営で、現地化には消極的です。そのために、現地に責任は持たせず、本社で全部決める。でも、本社では、中国で何が起きているかは結局分かりません。したがって、意思決定が遅れる。チャンスを失い、収益が伸び悩み、事業の縮小撤退に追い込まれるのが、負け組の企業の特徴です。
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