「聞く」と「語る」はどちらが大事か――人は対話において自ら語ることを優先しがちだが、相手の言葉によって自らの思考を変え、それを深めるためには、まず「聞く」ことを心がけることが重要である。特に「上司と部下」や「親と子」のように立場が異なる関係では、「聞く」ことで意識的に対等な場を作り、互いをリスペクトする姿勢が不可欠だ。また、形式的にただ聞くだけでなく、分からない部分は質問するなどの双方向のやり取りが求められる。そこで大事になるのは、対話の中で生じる理解の「ズレ」を恐れないことだ。第3話では、「聞く」ことの基本とその重要な意味、そしてそれによる「ズレ」について深く考えていく。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●「聞く」と「語る」はどちらが大事か
―― 今日は技法として「聞く」ということから始めているので「聞く」話が続いていますが、対話において「聞く」ことと「語る」こと、先生はどちらが大事だと思いますか。
納富 「聞く」と「語る」は対なので、どちらが大事ということはないのですけれど、通常のパターンでいくと、われわれは人に向かってしゃべるほうを優先してしまいます。自分が何を言うかということです。例えば、相手の言うことを聞かないで、自分の言いたいことだけ言う。
それでいったら、そもそも人と議論したり、対話したりするときにはそうなりがちなので、そこは少なくとも「聞く」ということをハーフ(&)ハーフにするという意味では、まず「聞く」ことをきちんと心がける、という点が一つ(ポイントとして)あります。
もう一つは、対話をするとき、言葉とか議論のやり取りをするときに何が一番いいかというと、自分自身が考えたことを言うことも大事だけれど、あるいは相手の言っていることによって自分の考えを変えていったり、あるいはそれに対してさらに自分が…という部分のほうが、より有効というか、必要としている、ということでいったら、その意味でもやはり「聞く」ということの持っている意味を非常に重視したいと思うのです。
―― はい。テンミニッツ・アカデミーで組織心理学の山浦一保先生という方が、例えば、研究室に卒業生が遊びに来ましたとか、学生が相談に来ましたというときにどうするかということで、最初はアイスブレイクのちょっとした会話をした後、意識して「貝」になりますと。(つまり)黙ってしまうそうです。そうすると、相談に来てくれた人が「実はね」みたいになるんですよというお話があったりしました。
日本の場合ですと、どうしても例えば企業でも1on1ミーティングだといわれることがあり、基本的には上司と部下で1対1で話しましょうねというような話になります。親子でも、親と子という立場がありますから、特に親側の人、上司側の人、先生側の人というのは、おそらく対話という中でも、いつも以上にその聞き方なりについて気をつけなければいけないところがあると思うのですが、例えば先生が、学生さんとか、あるいはお弟子さんと話す中で、気をつけておられることはありますか。
納富 はい。まさにいろんな場面のいろんな例があって、それぞれこう...