ロシアの中東政策
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ロシアとの稠密な経済関係で制裁をかいくぐるイラン
ロシアの中東政策(後編)鍵を握るトルコとイラン
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
激動する中東情勢の裏で、各国のしたたかで強靭な外交戦略が展開されている。ロシアの南流計画がブルガリアからトルコにスイッチされ、トルコがエネルギーのハブになろうとしている。一方で、西側諸国から制裁を受けるイランは、まさにその弱味を軸にロシアとの関係を深めようとしている。その歴史的背景と必然について、歴史学者・山内昌之氏(東京大学名誉教授)が解き明かしていく。(後編)
時間:16分36秒
収録日:2015年3月24日
追加日:2015年4月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●パイプライン再編で塗り替えられる資源地図


 皆さん、こんにちは。

 前回はロシアとトルコのエネルギー関係を通して、トルコのしたたかさとロシアのしぶとさに触れたところで終わりました。そして、「ブルーストリーム」から「ターキッシュストリーム」という天然ガスのパイプラインの流れについてもご説明しました。ブルーストリームを拡大したターキッシュストリーム・プロジェクトは、完成すれば630億立方メートルの天然ガスがトルコ・ギリシャ国境まで運ばれ、その先はロシアのガスプロムが南欧のクライアントに配分する予定としています。

 その際にトルコは、ロシアから二つの約束を取り付けたと伝えられています。一つは2015年の石油価格を6パーセント下げること。もう一つは、ブルーストリーム経由で30億立方メートルの天然ガスをトルコに追加的に供給することだといいます。つまりトルコは、新設されるパイプラインで年間に供給される630億立方メートルのうち、140億立方メートルは自国消費にまわせるものと期待しているのです。

 このような楽観的、ある意味「虫のいい」ともいえる考えがそのまま実現するかどうかは別として、トルコのガス消費は2014年で480億立方メートルですが、もしも140億立方メートルの新たな提供がかなう日がくれば、トルコのエネルギー事情は大変好転します。こうなると、トルコではロシア産ガスへの依存率がますます増えるのですが、依存する側のトルコが決してそこを交渉の不利な材料にはしていないのが、したたかと呼ばれるゆえんです。トルコは一方でロシア経済の弱体化や孤立を見透かしています。トルコのエネルギー大臣自身、「レバレッジを効かせているのはトルコだ」と、ガス価交渉などで有利な立場にあることを認めている節もあります。


●計画の裏で進んだトルコの原発開発


 結果的にはウラジーミル・プーチン大統領が6パーセントの値引きを公言しましたが、おそらくトルコは満足せず、15パーセントの値引きを密かに要求するだろうという観測が、トルコの各メディアには流れています。ロシアの提示した2倍以上のパーセンテージをさらに割り引けと言うわけで、このあたりの虚々実々の駆け引きは、なかなか見応えがあります。

 ロシアとトルコ間のエネルギー関係は、このように緊密さを増していますが、もう一つの重要なシンボルが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
新撰組と幕末日本の「真実」(4)江戸の剣術道場が流行した背景
剣術三大流派の道場主も農民出身?…剣術道場の意外な真実
堀口茉純
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
印象派の解体と最後の印象派展(4)印象派の対立とカイユボットの存在
印象派を裏で支えたカイユボット…なぜ評価が低かったのか
安井裕雄
大谷翔平の育て方・育ち方(7)不可能を可能にする力
「てっぺん」を目指したい――不可能を可能にする秘密とは
桑原晃弥
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄
編集部ラジオ2026(5)中島隆博先生「AIと人間」を紹介
【10分解説】中島隆博先生《AI時代と人間の再定義》
テンミニッツ・アカデミー編集部
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(6)日本人の現場力のすごさ
日本は助かる運命にあった…わが国は現場力で保っている国
門田隆将
こどもと学ぶ戦争と平和(6)平和な社会を守るために
チャーチルの名著『第二次世界大戦』に学ぶ真の平和への道
小原雅博