東洋思想を考える~東洋と西洋の融合と日本
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
川は急流、水は澄み切る―日本のリーダーの条件「清明心」
東洋思想を考える~東洋と西洋の融合と日本(2)日本の地理的特性と知的遺産
田口佳史(東洋思想研究家)
日本には地理的特性が二つあると語る老荘思想研究者・田口佳史氏。その特性は非常に特異なもので、そこから、世界のどこにもない、日本特有の精神性、文化が生まれている。そして、今も学べる知的遺産もある。そんな独特な日本の地理的特性について田口氏が語る。(後編)
時間:13分16秒
収録日:2014年10月29日
追加日:2015年7月9日
≪全文≫

●日本が持っている森林山岳性の特性の一つは神の発見


 さらに、日本の特性を少し申し上げておきたいと思います。

 「日本はどのような国ですか」と聞かれたとき、答え方としては、いろいろな観点があると思うのです。ですから、人によって日本の紹介の仕方は全く変わります。

 そこで、一番中庸な日本の紹介の仕方には何があるのだろうかと考えた場合に、私は、地理的特性があると思うのです。地理的には、日本の土地、場所を変えることはできません。したがって、誰が考えても、日本の位置づけに異議は生じないと思うのです。

 そこで、日本の地理的特性として、今日挙げたい点が二つあります。一つは、森林山岳海洋島国国家という地理的特性です。これを全部説明すると非常に時間がかかりますので、その中から、今日は、森林山岳性を取り上げてみたいと思います。

 日本が持っている森林山岳性という特性として、二つ挙げることができます。一つは、ずばり神の発見です。これは、自然の力と言ってもいいのですが、森林の奥底には人智を超えた大きな力があり、「そこには何か意思がある」ということです。そして、その「何か意思がある」存在が神になっていくのです。これは、「クマ」という言葉が変換を繰り返して、「カミ(神)」という言葉に変わっていくことにも表れているのですが、この神信仰が、まず特性の一つとして挙げられます。


●森林山岳性の神の発見からくる日本の特性は鋭い感性と深い精神性


 さて、この神信仰は、何を生んだのでしょうか。

 日本は、皆さまがよくご存知の通り、多神教の地域です。世界広しと言えども、多神教の地域は存外少ないのです。代表的な地域を挙げると、3カ所あり、それは、ギリシャ、インド、それから、日本です。これだけでも日本の特性として挙げられると思うのですが、さらに言えば、他の2カ所と日本の多神教には全く違うところがあるのです。多神教といってもそれぞれ神があるわけですから、「これが神です」と提示できなければ、その神信仰を受け入れる方は何が神だか分からないわけです。したがって、どこが違うかというと、他の2カ所、例えば、ギリシャには、アポロンの像やゼウスの像など、要するに神の像があり、「神を示してくれ」と言われれば、「これだ」と言って見せられるのです。インドにも、クリシュナ神といった神の像があります。

 ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘