AIIBの現状と今後の展望
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国が主導権を握るAIIB、懸念はガバナンス
AIIBの現状と今後の展望
伊藤元重(東京大学名誉教授)
連日報道されるAIIBの動向は、日中のもろもろの緊張も巻き込んで緊迫している。そもそもAIIBとは何なのか。ブレトン・ウッズ体制から変動相場制への移行、そして世界各地で相次いだ通貨危機。1945年以降の世界金融を俯瞰しつつ、東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏がAIIBの現状と展望を語る。
時間:14分47秒
収録日:2015年5月27日
追加日:2015年6月15日
≪全文≫

●国際経済への影響力を強めたい中国


 少し前から内外で非常に大きな関心を持って語られているAIIB(アジアインフラ投資銀行)について、少し感想めいたことを申し上げたいと思います。

 ご存知のように、AIIBは中国が主導権をとって、主にアジアのインフラ投資に対する資金を提供する仕組みとして、多くの国に参加を働きかけてきました。最初は、いろいろな仕組みについて懸念もあるということで、いわゆるG7(先進7カ国)など先進工業国は参加しないだろう。だから日本も参加しない、というような議論がありました。しかし、イギリスがメンバーとして参加すると手を上げてから、フランス、ドイツ、オーストラリアなど、いろいろな国が参加を表明して、結果的にはかなり大きな動きになっています。

 今後どうなるかは分かりませんが、今の段階では、アメリカ、日本、カナダは参加を表明していません。そこで今日は、これがどんな背景で起きているのか、また、今後どういう展開が予想され得るかについて、いくつか考えていることをお話ししたいと思います。

 中国にとってみると、こういう動きをとるのは、至って予想できることです。簡単にいうと、世界第2のGDP大国になった中国は、そういう国際的な仕組みや国際的な秩序の中で、ある種のリーダーシップをとりたいという意図を非常に強く持っています。

 これまでの大きな流れの中で、国連は別として、世界銀行やアジア開発銀行、IMF(国際通貨基金)といった経済の世界的な大きな枠組みの中で、中国は必ずしも主導権を持っているわけではありません。ましてや、中国の経済の流れとはかなり違った考え方が行われてきています。

 そういう意味で、中国がもう少し主導権を持てる国際的な機関をつくりたいという意図は、やはり常にあるだろうと思われます。とりわけアジアに焦点を置くことによって、中国の影響力が強いものができるのではないかということがあります。


●新興国のインフラ整備を取り込む狙いも


 また、もう一つやはり非常に重要なポイントは、特にアジアでは、これからインフラの需要が非常に大きいだろうということです。つまり、経済が発展していくに従って、港湾や道路、あるいは空港、その他もろもろのインフラ整備がやはり必要で、これは一方で大変な資金需要も必要となるわけです。

 中国にとってみると、この...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ