●エリートたちは権力保持のため敵とも組む
皆さん、こんにちは。
現在のイエメンが置かれた環境につきまして、これは、前回に紹介しました狡猾国家(Cunning State)ともいうべき非常に特異な破綻国家のダイナミズムの所産であるということを、今日は少し触れてみたいと思います。
イエメンは石油もそれなりに持っていますが、その資源を枯渇させ、そして、社会を分裂させて、国を崩壊の淵に追いやった、その政治パターンは、もつれた蜘蛛の巣のように、まさに今日のイエメン危機をつくっている、込み入った関係と複雑に結び付いています。この蜘蛛の巣状のもつれた関係は、二つの面において機能しています。
第一には、国民国家というレベルでの問題です。すなわち、国民国家イエメンという限られた部分におきまして、エリートたちは、競争し合いながら、自分たちの狭い利益を追求する分派の間での内戦に明け暮れているわけです。いずれの勢力も、本来であれば競合、あるいは対立し合う地域や宗派、イスラム主義者と同盟することを厭いません。なぜでしょうか。
それは、目的がひたすら自分たちの権力保持にあるわけですから、そのときに最適合な相手と組むのです。それが昨日までの敵であったとしても、今日、あるいは明日味方になる。つまり、自分たちの権力の維持に都合が良ければ組むということなのです。
●サウジアラビアとイランの対立が内戦と関係
第二には、より大きな地域というレベルでの問題です。イエメンの内戦は、サウジアラビアというスンナ派の大国と、シーア派の大国であるイランとの地域的な競合や対立が深まることと関係しています。すなわち、スンナ派対シーア派という宗派的な対立、あるいはアラブ対ペルシャという民族的なライバルといった関係性のあやによって助けられている反面、本来サウジアラビアとイランとの対立は、地政学的な要素を持っていたのです。
この問題でどの参加者もまた、宗派や民族間の紛争のどちらか一方を支持することによって、地域において代理戦争が生じたわけです。そして、この代理戦争の中で、いま一番活発でありながら日本の視野からはずれている地域がイエメンなのです。
●狡猾国家イエメンを育てたサウジアラビア
サウジアラビアは、歴史の上で伝統的にイエメンの“Cunning State”(狡猾国家)としての...
第2代イエメン大統領