戦後100年に向けた日米関係
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
重要なのは地域的ネットワーク構築と多国間秩序の進化
戦後100年に向けた日米関係(2)開かれた秩序の形成
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
今後の国際政治で問題となるのは、アメリカ中心の体制下で中国がどんな選択をするかだ。今の中国の体制は、アメリカが標榜する「自由世界」とは相容れない。そこで重要となるのは日本の多面的な役割だと、戦後100年に当たる2045年の日米関係に対する提言「パシフィック・ビジョン21」の日米政財界有識者会合メンバーでもある政策研究大学院大学(GRIPS)学長・白石隆氏は言う。政治に必要なのは、歴史的展望を見据えながら、秩序をどう進化させるかである。(後編)
時間:8分44秒
収録日:2015年5月19日
追加日:2015年7月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●パックス・アメリカーナ維持の鍵は中国


白石 それでは今からどうするのかということです。実は、私は相当心配しています。それはなぜか。ヨーロッパの場合には今、ウラジーミル・プーチン大統領がものすごく抵抗しているのですが、NATOの拡大の中でEUの拡大が起こり、そこでは完全にアメリカの平和とドル本位制が連動しています。もちろんユーロの通貨圏はありますが、基本的にはドルと連動しているのです。それから自由民主主義と市場経済という規範が当てはまる世界があり、構造的な矛盾はないわけです。むしろ構造的な矛盾は、ロシアとの間にあります。

 ところが東アジアでは、1978年の改革開放以来、中国がずっとこのシステムにフリー・ライド(ただ乗り)してきたわけです。例えば1990年代、中国が世界経済に占めるシェアは5パーセント以下でした。1990年は2パーセント以下ですし、2000年になっても4パーセント以下だったのです。ですから、その頃にはまだフリー・ライドできたのです。しかし、2020年くらいにはおそらく17~8パーセントくらいになってきて、2020代年半ばにはアメリカと拮抗するようになります。そのとき、アメリカ中心のシステムの中にいるけれどもアメリカの平和に挑戦し、ドル本位制にも挑戦するでしょう。国内的には自由民主主義ではなくて共産主義かつ一党独裁で、市場経済というけれども実際には社会主義市場経済で、3~4割の中国の経済は中国の国有企業がコントロールしている。こういうものを抱えながら、果たして安定するのでしょうか。おそらくこれから10~15年のスパンで見ると、これがものすごく大きい問題になってくるでしょう。

 もちろん決定的に重要なのは、中国はどうするのかということです。私は、習近平政権は基本的にこの決定をしたくない政権なのだろうと思っています。けれども、例えば習近平政権から次の政権に移るあたりで、いや応なしにそういう決定に直面してくるのかなと思います。ですが、どうなるかは分かりません。


●アメリカの平和を支える地域的ネットワーク


白石 そういうことを見据えながら、日本は何をするのかということです。それが、今から15~20年くらいの日本の国家戦略ということでは決定的に大事なことです。私は、それはアメリカの平和にあると言っていますが、実際にはアメリカの力が落ちている...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦