江戸と現在の教育比較
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
子どもの天性・天分が花開いて、初めて教育といえる
江戸と現在の教育比較(1)学ぶ教育と教える教育
田口佳史(東洋思想研究家)
江戸期の教育を理解するには、現在の教育との違いを挙げることが一番分かりやすいと話す老荘思想研究者・田口佳史氏。実際、江戸期と現在の教育にはどんな違いがあるのか。具体的な事例を交えながら、江戸期の教育を解説する。(前編)
時間:9分51秒
収録日:2015年1月13日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫

●子育ての基本は最初が肝心と姑息への戒め


 江戸の教育について、これまでずっとお話し申し上げているわけですが、一番分かりやすく申し上げようとすると、どうしても現在行われている教育と江戸の教育の相違点を挙げることになると思います。

 江戸期は、「最初が肝心」「初めを慎む」という言葉が非常に重視されていましたから、何でも初めが重要だということで、生まれる前の胎教から、生まれ出た後は3歳まで、また3歳から6歳までと、親は子育て、それから、養育、教育に苦心惨憺、あるいは、誠心誠意、励むわけです。

 今、苦心惨憺、誠心誠意と言いましたけれども、江戸の人の教育は、もっと豊かなのです。何かしなければいけないからといった義務に基づいてやっているのではなく、子育てを楽しんでやっているのです。江戸末期から明治初期にかけて、日本を訪れた外国人がこぞって「こんなに子どもを愛する、あるいは、子ども好きの大人が集まっている国はないのではないか」と言っており、皆にこにこしながら子どもと付き合っているという風情があったのです。

 有名な『養生訓』を書いた貝原益軒という人には、子育ての基本を著した『和俗童子訓』という名著があります。そこにも「最初が重要なのだ。最初に掛け違ってしまうと、子どもが年を経るにつれて、どんどん違った道へ行ってしまうのだよ」といったことが書かれています。ですから、最初が肝心だということを繰り返し言っているわけです。

 もう一つ言っているのは、姑息の愛はいけないということです。姑息ながらとか、姑息の手段といった、あの「姑息」で、一時逃れのことです。子どもがわんわんと泣くので、仕方がないから機嫌を取って一時逃れをやってしまうという「姑息」は、親が子どもに示す最大の罪であるとして、常に親は厳しく正しいことを貫き通してやっていかなければいけないと言っているわけです。


●子どもは社会の宝、地域教育と密接な関係


 やがて家庭の教育は終わりますが、家庭内の教育といいますと、いま想起されるのは家庭の中だけで教育を受けることだと思われがちです。しかし、当時は、地域教育と非常に緊密な関係にあり、子どもをこの世の宝物と言って、子どもに対して特別の思いがありましたから、社会がこぞって子どもの教育をしていました。いってみれば、世間、あるいは、社会が教室のように子どもをなんとか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
トップアスリートが語る究極の「アフォーダンス」とは
佐々木正人
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
『貞観政要』を読む(2)著作に登場する人物たち
房玄齢・杜如晦・魏徴・王珪―太宗の四人の優れた側近
田口佳史
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(2)“変わり者”の生かし方と後継者選び
「人材の組み合わせ」こそ「尖った才能」を輝かせる必勝法
水野道訓
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己