「自分をコントロールする力」の仕組み
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
アタッチメントが社会情緒的なスキル発達の根底にある
第2話へ進む
教育現場で注目を集める「自分をコントロールする力」とは
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
森口佑介(京都大学大学院文学研究科准教授)
人間は起きている時間の4分の1ほど何らかの欲求を我慢して過ごしている。実はこの「我慢する」という行為は、目標のために「自分をコントロールする力」と関係があり、「自制心」とも呼ばれている。「自分をコントロールする力」は動物にはほとんど見られない人間特有の力で、教育現場などで最近、注目を集めている。「自分をコントロールする力」はいつ、どのようにして発達していくのか。子どもの自制心の発達に着目したさまざまな研究を外観し、これらの問いに対する解答に迫っていこう。(全6話中第1話)
時間:7分41秒
収録日:2020年12月8日
追加日:2021年2月28日
≪全文≫

●人間は起床時間の約4分の1は我慢して過ごしている


 京都大学大学院文学研究科の森口と申します。今日は「自分をコントロールする力」と、その発達についてお話ししたいと思います。

 「自分をコントロールする力」は、一般的に「自制心」と呼ばれるものを指します。この自制心は、われわれ人間にとって非常に基本的、かつ根本的なものです。まずはこの点に関してお話ししていきます。

 まず一つ研究を紹介します。200人の男女を対象にポケベルを携帯してもらいます。そして、1日の中で無造作に7回そのポケベルを鳴らす調査です。ポケベルは皆さん、持っていたことがあるかもしれませんが、適宜、音が鳴りますね。その音が鳴ったときに、何をしていたか、研究者が尋ねるのです。この研究では、ポケベルが鳴った前後に何らかの欲求を感じていたか、尋ねました。食欲や睡眠欲、最近ではSNSを使いたいという欲など、さまざまな欲があると思いますが、そのような欲を感じていたのか、そしてその欲求を抑制するよう努めていたのか、尋ねたのです。

 例えば、皆さんが働いているとき、あるいは勉強をしているときに、お腹が空いた、あるいは眠いと思うことがあると思います。それでも、そのような気持ちをある種我慢しながら、仕事や勉強に向かい続けることがあるでしょう。このような欲求の抑制や我慢をどの程度行っているのか、この研究では調査したのです。その結果、起きている時間の約4分の1、およそ4時間程度、被験者は何らかの欲求を感じ、そしてそれを抑えていたことが明らかになりました。

 つまり、この研究から、われわれは1日のうちの4時間も自分を抑制し、コントロールし、我慢していることが分かるわけです。今日はこのような傾向が、子どもの発達段階の中でどのように出現するのか、詳しくお話ししたいと思います。


●「自制心」は人間固有の力


 もう少し、自分をコントロールする力について説明します。自分をコントロールする力とはより具体的にいうと、何かの目標に向かって我慢する、あるいはコントロールする力のことを指します。例えば、皆さんがダイエットしていたとしましょう。ダイエットは、自分の健康を維持するために、何かを食べたい、あるいは飲みたいという欲求を抑えつけることですよね。ダイエットのためにケーキやビールを我慢することは、皆さんが日常的に取り組んでいるかと思い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ