「自分をコントロールする力」の仕組み
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アタッチメントが社会情緒的なスキル発達の根底にある
「自分をコントロールする力」の仕組み(2)アタッチメントと社会情緒的スキル
哲学と生き方
森口佑介(京都大学大学院文学研究科准教授)
自分をコントロールする力の根底には、「アタッチメント」と呼ばれる親などとの情愛的な絆がある。このアタッチメントがしっかりしていれば、幼児期に「社会情緒的なスキル」、特に「実行機能」と呼ばれる自分をコントロールする力が成長する。この実行機能には主に社会性に関わる感情面と主に学力に関わる思考面の2つの側面がある。(全6話中第2話)
時間:6分42秒
収録日:2020年12月8日
追加日:2021年3月7日
≪全文≫

●アタッチメントが自制心の根底にある


 この自分をコントロールする力の根底にあるのは、実は親子関係なのです。これは、心理学では「アタッチメント」と呼ばれます。アタッチメントは、人間に限ったものではないですが、ここでは一応人間に即して説明します。人間が危機的な状況や、困った状況に陥った際に、特定の個体(多くの場合、親ですが)、親あるいはおじいちゃん、おばあちゃんに対して持つ情愛的な絆を「アタッチメント」と呼びます。

 特に非常に無力な存在である生まれたばかりの赤ちゃんは、このアタッチメントを持つことで、安心感を得て安全を感じることができます。このアタッチメントが、全ての社会情緒的スキルの基本にあることが知られています。

 その理由は、親などに対するアタッチメント、つまり情愛的な絆や親子関係がしっかりと形成されていると、子どもは例えば自分は人に愛される存在だ、あるいは人に優しくしてもらえる存在だなどの、自分についてのある種の考え方やモデルを持つことが知られています。また、自分だけではなく、他人についてもモデルを持つことも分かっています。例えば他人は自分を愛してくれる存在、あるいは他人は自分に親切にしてくれる存在などのモデルを持つようになるのです。

 社会情緒的スキルは自分もしくは他人と折り合いをつける力だと先ほど申し上げましたが、その基本にこのような親子関係があるわけです。しっかりとした親子関係を築くことができれば、自分について自信を持ち、他人を信用することもできるようになります。逆に、親子関係がうまくいっていなければ、こうしたことが困難になるのです。

 このように、アタッチメント、親子関係、情愛的な絆が、自分をコントロールする力の根底にあることが分かっています。


●2歳以降に発達する「社会情緒的スキル」は三つ


 ここまでの話は、赤ちゃんの頃の話です。0歳から2歳前後にかけては、親子関係が非常に大事で、子どもの成長・発達の基本になると考えられています。そして、2歳以降の「幼児期」と呼ばれる時期には、「社会情緒的スキル」が発達することが知られています。

 より具体的には、自分についてのスキルとして、自分をコ...

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