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青年期の暴走には脳の変化と感情面の実行機能に関係がある

「自分をコントロールする力」の仕組み(4)実行機能発達のメカニズム

森口佑介
京都大学大学院文学研究科准教授
情報・テキスト
なぜ実行機能は幼児期に著しく発達するのか。3歳から5歳にかけての子どもを対象とした研究で、実行機能の発達は脳の成長と密接な関係があることが分かった。実行機能は幼児期に著しく発達した後、思考面は緩やかに発達していくのだが、中高生の時期になると欲求を抑える感情面の実行機能は一旦下がってしまう。その時期は脳に大きな変化が訪れるので欲求をうまく抑えられなくなり、暴走したりするなど不安定な時期なのだ。よって、実行機能の発達に関しては、子どもの頃から成人するまで一貫して考える必要がある。(全6話中第4話)
時間:12:27
収録日:2020/12/08
追加日:2021/03/21
≪全文≫

●なぜ実行機能は幼児期に著しく発達するのか


 ここまで、実行機能の思考面と感情面の二つの側面に関してお話ししてきました。特に重要なこととして、どちらの実行機能も3歳から5歳、6歳程度にかけての幼児期に大きく成長すること、そして小学生の時期に緩やかな成長があることを見てきました。

 それでは、なぜ実行機能は幼児期に著しく発達するのでしょうか。その点について考えていきたいと思います。

 この時期に実行機能が急激に発達する理由は、やはり脳の成長に重なっているからだと考えられています。最近ではさまざまな場面で脳について説明されることが多いので、皆さんもご存じの部分もあるかと思いますが、私たちの心の少なくとも一部は脳によって支配されていると考えられています。脳の中には脳の表面の「大脳皮質」や、脳の奥にある「大脳辺縁系」と呼ばれる領域がありますが、実行機能に関してはどちらも重要です。

 こちらの図をご覧ください。少しややこしいのですが、簡単に説明します。赤い部分は自分の欲求と関わる脳の領域です。例えば食欲や睡眠欲、SNSをやりたいなどの欲求と関わります。したがって、この領域の活動が強ければ強いほど、何かを得たい、食べたい、飲みたい、眠りたいなどの気持ちが強いと考えてください。

 この赤い領域は欲求に関わる脳の領域ですが、当然実行機能の中には、そうした欲求を抑えつけ、制御し、コントロールする部分が必要になります。そのコントロールする部分は、この青い部分なのです。特に「外側前頭前野」と呼ばれる、脳の表面の前頭前野という領域は、欲求をコントロールするために非常に重要な役割を果たしていることが知られています。

 この外側前頭前野という領域は、他の動物、例えばチンパンジーや犬と比較しても、人間において特に成長・発達している部分だと知られており、特に重要な部分だと考えられています。自分をコントロールするための実行機能に、この前頭前野という脳の領域が大きな役割を果たしているのです。


●研究から明らかになった実行機能の発達と脳の関係


 これに関連する私たちの研究についてご紹介します。ちょうど実行機能が発達する時期にある3歳と5歳の子どもを対象に、先ほど紹介した色から形、形から色と、ルールの切り替えをするという、思考面の実行機能を測るテストに取り組んでもらい、その際の脳活動を分析しました。

 3歳の子どもは、先ほども指摘した通りまだまだ成長途上ですので、ルールを上手に切り替えることのできる子と、そうではない子がいました。ここでは、前者を「通過群」、後者を「固執群」と呼んでいます。

 これらを2つのグループに分けて、脳活動を分析しました。脳の赤い部分は、特に活動が強い領域を示しています。通過群の子どもに関して、左上の図はルールを切り替える前で、左下の図がルールを切り替えた後となります。ルールを切り替える前後に、丸で囲まれた右脳の外側前頭前野と呼ばれる領域が、活発に活動していることが分かりました。

 一方、ルールを切り替えることができなかった固執群の子どもに関しては、同じような活動が認められませんでした。右側の二つの図の丸で囲まれている部分は、下の方がより青くなっており、むしろ脳の活動が下がっていることを意味しています。つまり、この課題に成功できる程度に実行機能を発達させている子どもは、右の外側前頭前野を強く活動させていますが、固執群、つまり実行機能がまだ十分に発達していない子どもは、前頭前野という領域を活動させていないことが分かりました。このような研究から、実行機能の発達に、外側前頭前野が密接に関わっていることを、私たちは明らかにしました。

 ここまでは、3歳の子どもの脳活動を対象としましたが、もう少し成長した5歳の子どもの脳活動も分析してみました。すると、5歳の子どもは、この課題を非常に簡単にクリアできる、つまり非常に良い成績を収めることができるのです。それゆえ、実行機能が十分に発達していると考えられます。

 十分に実行機能が発達している5歳の子どもの脳活動を見てみると、両方の前頭前野が活動していることが示されました。先ほどの3歳の子どもの場合、良い成績を出した子でも右側の前頭前野のみ活動していたのですが、5歳の子の場合は、右も左も活動していたのです。

 この結果の解釈は少し難しいのですが、5歳の子どもたちは右と左の前頭前野を使うことで、効率よく、あるいはバランスよくこの課題をクリアしているのではないかと、私たちは考えています。つまり、より5歳の子どもの方が3歳の子どもよりも、上手に実行機能を使...
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