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マシュマロテストが示す幼児期の実行機能の発達度

「自分をコントロールする力」の仕組み(3)幼児期に発達する実行機能

森口佑介
京都大学大学院文学研究科准教授
情報・テキスト
実行機能には感情面と思考面の二つの側面があるが、それぞれどのように発達していくのか。まず、感情面に関しては「マシュマロテスト」というテストがある。マシュマロという子どもにとって魅力的なお菓子を食べるのをどれぐらい我慢できるかを計測するのだが、こうしたテストを通じて指摘されるのは、自分をコントロールする力に関する要素として、「未来のことを考える」という側面が非常に重要で、それが幼児期に急激に発達するということだ。それは思考面についても同様で、その発達の度合いは幼児期が最も著しく、その後は緩やかになっていく。(全6話中第3話)
時間:06:27
収録日:2020/12/08
追加日:2021/03/14
≪全文≫

●感情面の実行機能を測る「マシュマロテスト」


 まず感情面の実行機能について考えていきましょう。

 感情面の実行機能は、一般的にもよく知られるようになった、「マシュマロテスト」というもので測られます。マシュマロテストについて簡単に説明します。子どもの目の前にマシュマロを一つ置きます。これはアメリカで行われていたテストなので、マシュマロが子どもにとって非常に魅力的なお菓子であるという前提を置いています。日本の子どもの場合、マシュマロが本当に魅力的かという点に関して疑問は少しありますが、一応ここでは魅力的なお菓子だと考えてください。

 目の前においしそうなマシュマロが一つ置き、それをすぐ食べても良いと伝えます。しかし、15分待つことができれば、マシュマロを二つ食べても良いと同時に伝えるのです。つまり、今すぐマシュマロを一つ食べるか、少し我慢して二つ食べるかという選択を迫るテストなのです。

 このテストでは、マシュマロを二つ得ることを目標とした場合に、その目標の達成のためには、今すぐ目の前のマシュマロを食べたいという気持ちを抑えなければなりません。したがって、目標の達成のために自分の食欲を抑えられるかどうかを調べるテストになります。子どもの場合、このテストが非常に頻繁に使われるのです。

●感情面の実行機能は幼児期に急激に発達する


 このテストから、まずいわゆる赤ちゃんから2歳以下、専門的には「乳児期」と呼びますが、その時期には、目の前の欲求を抑えつけることは、なかなか難しいことが分かっています。例えばマシュマロ以外でも、ブドウでもその他のフルーツでも良いのですが、何か自分にとって食べたいものが目の前にあった場合に、それを我慢するのは難しいのです。

 この感情面の実行機能は2歳ごろから、「幼児期」と呼ばれる4歳から5歳までに、著しく発達することが分かっています。2歳児の場合、目の前にマシュマロやクッキーを置かれると、それを食べることをなかなか我慢できませんが。しかし、例えば何十人かの子どもを対象に実験をやった場合、3歳程度であれば、目の前にクッキーやマシュマロを置かれても、約半分の子は4分程度待つことができるという結果が出ています。4分経過すると食べてしまうのですが、それでも4分待てるのは大きな進歩です。

 4歳になると8割から9割程度の子どもが、4分程度待つことができるのです。2歳児はほとんど待てないのに対して、3歳から4歳になると4分程度待つことができる割合が増えてきます。さらに5歳から6歳となると、10分から15分待つことができるようになります。つまり、保育園や幼稚園に通うような幼児期には、この感情面の実行機能は大きく発達します。

 ただ、5、6歳の子どもは比較的長時間待てるようにはなりますが、明日まで待つとなるとなかなか難しいのです。自分をコントロールする力に関する要素として、「未来のことを考える」という側面が非常に重要だと指摘されています。明日のことまで考えて明日まで待つことは、幼児には難しいようなのです。

 また、例えば今すぐ50円と、明日まで待った後に100円では、どちらが良いかと問われた場合、小学校1年生から2年生であれば、今すぐ50円欲しいと答えてしまうのですが、3年生から4年生になると、明日まで待って100円欲しいと選択できるようになります。つまり、小学生の時期にも、やはり自分をコントロールする力は少しずつ発達していくわけですね。


●思考面の実行機能も幼児期に急激に発達する


 一方、思考面に関しては、カードを用いたテストで測ることができます。色や形など、二つの系統で分類できるカードを用いたテストです。例えばここに、青いコップと赤い星というカードがあります。これを目印として、赤いコップのカードを分類してくださいと指示します。この場合、色によっても、形によっても分類できます。例えば色で分類する場合、赤いコップのカードは赤い星と同じところに分類します。

 これを何回か実践してもらった跡に、今度は形で分類するように子どもに指示します。赤いコップのカードを最初赤い星のほうに置くように指示していたのですが、今度はそれを形という系統に着目して、青いコップの方に分類するように指示します。つまり、色や形などのルールを柔軟に切り替えることができるかという、頭を切り替える力を測るテストになります。

 このような頭を切り替える力も、幼児期に発達します。この図には、3歳から15歳の子どもを対象に、今説明した頭を切り替えるテストを行った際の成績が示されています。横軸が3歳から15歳の年齢を示していて、縦軸が成績です。すると、3歳から5歳、6歳程度にかけて、思考...
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