「自分をコントロールする力」の仕組み
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マシュマロテストが示す幼児期の実行機能の発達度
「自分をコントロールする力」の仕組み(3)幼児期に発達する実行機能
森口佑介(京都大学大学院文学研究科准教授)
実行機能には感情面と思考面の二つの側面があるが、それぞれどのように発達していくのか。まず、感情面に関しては「マシュマロテスト」というテストがある。マシュマロという子どもにとって魅力的なお菓子を食べるのをどれぐらい我慢できるかを計測するのだが、こうしたテストを通じて指摘されるのは、自分をコントロールする力に関する要素として、「未来のことを考える」という側面が非常に重要で、それが幼児期に急激に発達するということだ。それは思考面についても同様で、その発達の度合いは幼児期が最も著しく、その後は緩やかになっていく。(全6話中第3話)
時間:6分27秒
収録日:2020年12月8日
追加日:2021年3月14日
≪全文≫

●感情面の実行機能を測る「マシュマロテスト」


 まず感情面の実行機能について考えていきましょう。

 感情面の実行機能は、一般的にもよく知られるようになった、「マシュマロテスト」というもので測られます。マシュマロテストについて簡単に説明します。子どもの目の前にマシュマロを一つ置きます。これはアメリカで行われていたテストなので、マシュマロが子どもにとって非常に魅力的なお菓子であるという前提を置いています。日本の子どもの場合、マシュマロが本当に魅力的かという点に関して疑問は少しありますが、一応ここでは魅力的なお菓子だと考えてください。

 目の前においしそうなマシュマロが一つ置き、それをすぐ食べても良いと伝えます。しかし、15分待つことができれば、マシュマロを二つ食べても良いと同時に伝えるのです。つまり、今すぐマシュマロを一つ食べるか、少し我慢して二つ食べるかという選択を迫るテストなのです。

 このテストでは、マシュマロを二つ得ることを目標とした場合に、その目標の達成のためには、今すぐ目の前のマシュマロを食べたいという気持ちを抑えなければなりません。したがって、目標の達成のために自分の食欲を抑えられるかどうかを調べるテストになります。子どもの場合、このテストが非常に頻繁に使われるのです。

●感情面の実行機能は幼児期に急激に発達する


 このテストから、まずいわゆる赤ちゃんから2歳以下、専門的には「乳児期」と呼びますが、その時期には、目の前の欲求を抑えつけることは、なかなか難しいことが分かっています。例えばマシュマロ以外でも、ブドウでもその他のフルーツでも良いのですが、何か自分にとって食べたいものが目の前にあった場合に、それを我慢するのは難しいのです。

 この感情面の実行機能は2歳ごろから、「幼児期」と呼ばれる4歳から5歳までに、著しく発達することが分かっています。2歳児の場合、目の前にマシュマロやクッキーを置かれると、それを食べることをなかなか我慢できませんが。しかし、例えば何十人かの子どもを対象に実験をやった場合、3歳程度であれば、目の前にクッキーやマシュマロを置かれても、約半分の子は4分程度待つことができるという結果が出ています。4分経過すると食べてしまうのですが、それでも4分待てるのは大きな進歩です。

 4歳になると8割から9割程度の子どもが、4分程度待つこと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治