中国にとって国境問題とは何か
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中華思想を「太陽系」と考えれば、理解が進む
中国にとって国境問題とは何か
政治と経済
石川好(作家)
尖閣問題をめぐり、日中がにらみあっている。主張は平行線をたどり、「中国にとっての国境問題とは何か」という疑問は深まる一方だ。互いの認識のズレはなぜ生じたか。中国という難問解決への糸口は、まずここから。
時間:5分53秒
収録日:2013年10月31日
追加日:2014年3月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●尖閣問題から、「中国にとって国境問題とは何か」を考える。


今回から、4~5回にわたって中国を論じていきます。まず、中でもわれわれに一番分かりにくい問題、「中国にとって国境問題とは何か」を考えておく必要があると思います。
例えば今、日本と中国が正面衝突している問題は、尖閣や釣魚島の領有権、主権をめぐっての紛争です。日本側には、国境線を明確にしたいという衝動があります。他方の中国は、「棚上げ論」という言葉を使ってみたり、今、係争地あるいは紛争地域であることを認めればそれでよいと言う、こういうズレがあるわけです。
日本側は「歴史的にも、国際法上でも固有の領土である」と主張して、近代国家の枠組みの中で国境がどこなのかを聞こうとしている。対する中国は、「棚上げでもいいし、紛争地域であればいい。明確な国境線を引く必要はない」と言って、双方の主張がズレたまま向かい合っています。では、一体なぜ中国はそういった考え方をするのか。歴史を振り返りつつ、話してみようと思います。

●「中華思想」は太陽系と考えれば、理解が進む。


そもそも中国という国の持つ、いわゆる「中華思想」の捉え方。これが、日本人が用いる「中華思想」とは意味合いが違っています。文明の中心が中国であり、これを中原と呼ぶ。これは前にも述べましたが、そういう考え方が基本にあります。その中原の外側に、円を描くように世界が広がっている。太陽を例にとれば分かりますが、「王の光が届くところ」という言葉がありますが、近ければ眩しいぐらい、しかし中心から外へとどんどん離れていけばその力も小さくなるのです。
太陽系の中心に太陽があるように、中原の周辺にいくつもの国があって、それらは中国の思想や文化から恩恵を受けているという考え方が、中国の「中華思想」です。そして、このことを尊敬してくれさえすれば、中国はどういう対応もする。非常に分かりやすく言えば、そういう考え方をしているのです。

●「朝貢」の根本に敬意あり。それはいつも「倍返し」を伴った


われわれがよく知る朝貢という外交の考え方も、そこから発しています。日本は、遣隋使や遣唐使を送ってきましたが、古くは随になる以前から朝貢を行ってきました。中国側が周辺国からの使者を迎え入れるときには、名前をつけてくれる。例えば「親魏倭王(シンギノクニノワオウ)」といった呼び方をします。これ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子