●尖閣問題から、「中国にとって国境問題とは何か」を考える。
今回から、4~5回にわたって中国を論じていきます。まず、中でもわれわれに一番分かりにくい問題、「中国にとって国境問題とは何か」を考えておく必要があると思います。
例えば今、日本と中国が正面衝突している問題は、尖閣や釣魚島の領有権、主権をめぐっての紛争です。日本側には、国境線を明確にしたいという衝動があります。他方の中国は、「棚上げ論」という言葉を使ってみたり、今、係争地あるいは紛争地域であることを認めればそれでよいと言う、こういうズレがあるわけです。
日本側は「歴史的にも、国際法上でも固有の領土である」と主張して、近代国家の枠組みの中で国境がどこなのかを聞こうとしている。対する中国は、「棚上げでもいいし、紛争地域であればいい。明確な国境線を引く必要はない」と言って、双方の主張がズレたまま向かい合っています。では、一体なぜ中国はそういった考え方をするのか。歴史を振り返りつつ、話してみようと思います。
●「中華思想」は太陽系と考えれば、理解が進む。
そもそも中国という国の持つ、いわゆる「中華思想」の捉え方。これが、日本人が用いる「中華思想」とは意味合いが違っています。文明の中心が中国であり、これを中原と呼ぶ。これは前にも述べましたが、そういう考え方が基本にあります。その中原の外側に、円を描くように世界が広がっている。太陽を例にとれば分かりますが、「王の光が届くところ」という言葉がありますが、近ければ眩しいぐらい、しかし中心から外へとどんどん離れていけばその力も小さくなるのです。
太陽系の中心に太陽があるように、中原の周辺にいくつもの国があって、それらは中国の思想や文化から恩恵を受けているという考え方が、中国の「中華思想」です。そして、このことを尊敬してくれさえすれば、中国はどういう対応もする。非常に分かりやすく言えば、そういう考え方をしているのです。
●「朝貢」の根本に敬意あり。それはいつも「倍返し」を伴った
われわれがよく知る朝貢という外交の考え方も、そこから発しています。日本は、遣隋使や遣唐使を送ってきましたが、古くは随になる以前から朝貢を行ってきました。中国側が周辺国からの使者を迎え入れるときには、名前をつけてくれる。例えば「親魏倭王(シンギノクニノワオウ)」といった呼び方をします。これ...