あなたの旗は何ですか?
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日の丸反対の人々が掲げようとしている旗は、一体何の旗?
あなたの旗は何ですか?
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
南部の旗、日の丸、旗幟鮮明にするときの旗、安倍政権の憲法改正・集団的自衛権という旗・・・。政治学者・曽根泰教氏がさまざまな角度から「旗」を考察する。
時間:5分55秒
収録日:2015年7月13日
追加日:2015年8月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●「南部の旗」が問題になっている


 少し変わった角度からお話しします。「あなたの旗は何ですか」。旗といえば、自分の家に飾る旗、国旗など、さまざまな旗があります。なぜこのような話をするかといいますと、最近、アメリカ南部で「南部の旗」を掲揚しない動きが出てきているのです。南部の旗とは赤地に青のエックスの枠が入り、13の白い星がついているもので、もともとは「南軍旗」でした。

 2015年6月、サウスカロライナ州チャールストンで黒人中心の教会に白人が乱入し、9人を射殺した事件が起きました。その時、白人青年が持ち、車に付けていたのが南部の旗だったのです。この事件をきっかけにして、州議会議事堂など、南部でこの旗を掲げている所から旗を外す話がもち上がっているのです。今も南部には南軍の旗を掲げる習慣が残っており、それが問題になっているわけです。


●日本には、日の丸以外の旗はない


 次に、私自身が体験したことをお話しします。以前、日本で国旗や国家が論争になっていたとき、あるアメリカ人の学者と話しました。彼は、日本語はできませんでしたが、新聞などで日本のことをよく学んでおり、「日の丸に反対する人々がいるが、彼らが掲げようとしている旗とは何だ」と質問してきました。いやいや、そんな旗はないのだと説明するのが非常に難しく、困ったことを覚えています。

 彼は、日の丸を否定する人は、例えばアメリカの南部の旗のような「違う旗」を掲げたいのだろうと思っていたのです。しかし、日本には無宗教同様、日の丸以外の旗はありません。この「旗がない」ことを外国人に説明するのはとても難しい。「旗がない」という選択肢は、他の国の人々には理解しにくいことなのです。


●旗幟鮮明にしろ


 次にもう一つ。「Show the flag.」という言葉があります。湾岸戦争の頃に出てきた言葉ですが、これを「インド洋に日の丸を掲げろ」という誤訳、誤解をした政治家がいます。「Show the flag.」は「旗幟鮮明にしろ」という意味で、インド洋に日の丸を掲げろとは全く違います。

 この「旗幟鮮明」について、私には具体的なエピソードがあります。アメリカの国際政治学者、ジョセフ・ナイ氏と安全保障について話しているときに、「日本政府は時に立場がはっきりしないことがある。評論家のような立場を取って、アメリカを批判す...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留