●「南部の旗」が問題になっている
少し変わった角度からお話しします。「あなたの旗は何ですか」。旗といえば、自分の家に飾る旗、国旗など、さまざまな旗があります。なぜこのような話をするかといいますと、最近、アメリカ南部で「南部の旗」を掲揚しない動きが出てきているのです。南部の旗とは赤地に青のエックスの枠が入り、13の白い星がついているもので、もともとは「南軍旗」でした。
2015年6月、サウスカロライナ州チャールストンで黒人中心の教会に白人が乱入し、9人を射殺した事件が起きました。その時、白人青年が持ち、車に付けていたのが南部の旗だったのです。この事件をきっかけにして、州議会議事堂など、南部でこの旗を掲げている所から旗を外す話がもち上がっているのです。今も南部には南軍の旗を掲げる習慣が残っており、それが問題になっているわけです。
●日本には、日の丸以外の旗はない
次に、私自身が体験したことをお話しします。以前、日本で国旗や国家が論争になっていたとき、あるアメリカ人の学者と話しました。彼は、日本語はできませんでしたが、新聞などで日本のことをよく学んでおり、「日の丸に反対する人々がいるが、彼らが掲げようとしている旗とは何だ」と質問してきました。いやいや、そんな旗はないのだと説明するのが非常に難しく、困ったことを覚えています。
彼は、日の丸を否定する人は、例えばアメリカの南部の旗のような「違う旗」を掲げたいのだろうと思っていたのです。しかし、日本には無宗教同様、日の丸以外の旗はありません。この「旗がない」ことを外国人に説明するのはとても難しい。「旗がない」という選択肢は、他の国の人々には理解しにくいことなのです。
●旗幟鮮明にしろ
次にもう一つ。「Show the flag.」という言葉があります。湾岸戦争の頃に出てきた言葉ですが、これを「インド洋に日の丸を掲げろ」という誤訳、誤解をした政治家がいます。「Show the flag.」は「旗幟鮮明にしろ」という意味で、インド洋に日の丸を掲げろとは全く違います。
この「旗幟鮮明」について、私には具体的なエピソードがあります。アメリカの国際政治学者、ジョセフ・ナイ氏と安全保障について話しているときに、「日本政府は時に立場がはっきりしないことがある。評論家のような立場を取って、アメリカを批判す...