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DATE/ 2022.11.02

免許不要「電動キックボード」の危険性

 最近、電動キックボードを見かけるようになりました。また少し前には飲酒運転による死亡事故のニュースもあったので、そこで初めて知ったという人もいるかもしれません。電動キックボードとは、キックボード(スケートボードにハンドルと小さなタイヤがついたような乗り物)にバッテリーとモーターを付け、自走できるようにしたものです。キックボードは新しい可能性を秘めた乗り物ですが、気を付けなければならない面も多いです。ここでは現状でのルールと今後のルール改正の内容までを見てみましょう。

現状では「原動機付自転車」

 2022年現在の道路交通法上、電動キックボードは「車両」に該当し、電動式モーターの定格出力が0.6キロワット以下のものは、「原動機付自転車」とされ、それ以上の出力のものは「普通自動二輪車」などに分類されています。つまり現状では基本的に、その区分に応じた免許が必要です。またヘルメットの着用などのルールを守る必要があります(ただしいくつかの事業者のキックボードに関しては実証エリアを走行する場合に限り特例が設けられています)。

 また、電動キックボード(定格出力0.6kW以下)が公道を走るためには、後写鏡、警音器、前照灯、制動装置、後部反射器が必須です。最高速度20km/h以上の車両の場合はこれらに加えて、番号灯、尾灯、制動灯、方向指示器、速度計が必要になります。また、制動装置、前照灯、後写鏡等の構造や装置については、車両区分に応じた保安基準に適合している必要があります。また、ナンバープレート(標識)の装着、自賠責保険の契約も必須です。

 もちろんこれらに違反すれば、それぞれに厳しい罰則が科されます。たとえば無免許運転や整備不良車両運転を行った場合、それぞれ「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」となります。さらにもし無保険運行(自賠責保険未契約での運転)を行った場合「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。この辺りは決しておろそかにできません。

最高速度20㎞/h以下のキックボードは免許不要に

 一方、2022年4月に国会で可決された改正道路交通法では、「特定小型原動機付自転車」という新たな区分が設定されました。ここでの「特定小型原動機付自転車」の定義は「最高速度が20㎞/h以下」「長さ190㎝幅60㎝以内」とのこと。これには主に電動キックボードの一部が該当します。今後こういった電動キックボードは原付と自転車の中間的な扱いとなるようです。また最高時速21km/h以上30km/hまでの電動キックボードについては、現在の道路交通法と同様、原動機付自転車の区分です。

 「特定小型原動機付自転車」は「免許不要」となります。ただし運転できるのは「16歳以上」と原付と同じです。走ることのできる場所は基本的に自転車と同様「車道、普通自転車専用通行帯、自転車道」です。また、最高速度を6㎞/hに抑えている場合、補助標識で自転車が歩道走行可能とされている歩道であれば走行可能となり、さらにヘルメットは努力義務となります。現在の原付としてのルールからかなり緩められることになりそうです。

 改正道路交通法は2024年4月までに全面的に施工されます。こういった改正について開発者は危険性を指摘しています。開発者によると電動キックボードの走行性能は「自転車以上バイク未満」であり「小径タイヤなので荒れた路面や段差は苦手」で「立ち乗りなので重心が高い」とのこと。この点を頭に置き、その特性を理解しなければ事故につながる恐れがあるとのこと。また「特定小型原動機付自転車」に入る電動キックボードは、現状では「最高速度が20㎞/h以下」「長さ190㎝幅60㎝以内」となっています。すべての電動キックボードが「免許不要」なわけではない点には注意が必要です。

<参考サイト>
電動キックボードについて│警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/torikumi/kickboard.html
電動キックボード法改正のハナシ│藤井充氏(開発者)のnote
https://note.com/fudien/n/nbaebdf4bf1ed
道路交通法の改正によって電動キックボードの規制はどう変わる?|@DIME
https://dime.jp/genre/1449768/
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