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DATE/ 2023.03.31

「レジオネラ菌」感染するとどうなる?

 福岡の老舗温泉旅館で、本来は週1回大浴場の水を取り替えるところを年2回しか取り替えておらず、基準値の最大3700倍ものレジオネラ菌が検出されたというニュースが報じられ、驚いた方も多いのではないでしょうか。これまでもレジオネラ菌が基準値を超えていて営業停止となる施設はあったものの、今回の数値は多くの人に衝撃を与えるのに十分なものでした。

 大浴場の水を替えないことは汚い、衛生的に大きな問題もあることは分かるものの、そもそもレジオネラ菌とは?という疑問も持たれたことでしょう。身近にありながら、時には死亡するリスクも孕んでいるこのレジオネラ菌についてご説明しましょう。

レジオネラ菌とは?

 レジオネラ菌は河川、湖、温泉や土壌など自然界に存在する細菌で、レジオネラ属菌として現在では60種類ほどが発見されています。おもな感染経路としてはレジオネラ属菌に汚染された細かい霧やしぶきや、土壌の粉塵を吸入すること、となっています。ヒトからヒトへの感染はないとされています。

 レジオネラ菌に感染すると、軽症で済むケースと重症、最悪の場合死に至るケースとがあります。軽症で済むケースは「ポンティアック熱」と呼ばれ、一時的に発熱、悪寒、筋肉痛などの症状が起こりますが、数日で自然に治癒します。

 一方、重症になる場合は「レジオネラ肺炎」と呼ばれ、全身の倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状に始まり、高熱、寒気、呼吸困難などに進行することも。肺炎になって死亡したケースがこれまでも確認されているため、軽い病気だとみくびってはいけません。病気の進行が早く、致死率の高い病気であるという認識を持っておきましょう。特に高齢者や新生児、免疫が低下している場合には発症リスクが高いとされているので注意が必要です。

どんなところにいる菌なのか?

 レジオネラ菌は自然界に存在する細菌と上述しましたが、人工環境水にも存在しています。冷却塔水、循環式浴槽水など水温20℃以上の人工環境水の衛生状態が悪い状態は、細菌を餌とするアメーバなどが生息しやすい環境となり、そのアメーバに寄生する形でレジオネラ菌が発生します。こうした水のしぶきや霧を吸い込むことで菌に感染してしまうのです。

 つまり、加湿器や循環式浴槽を使っている家庭の場合にはレジオネラ菌が身近にいる可能性が非常に高くなっていると言い換えることもできます。加湿器も風呂も常に清潔な状態を保つことで、レジオネラ菌が発生しにくい対策をとることが大切です。

 また、海外旅行中に感染するケースも確認されています。ここ数年では中国、韓国、トルコ、イタリア、台湾へ旅行して感染したケースもあるということです。国内でも7月、9月といった旅行シーズンに感染例が多いことから、旅行中の入浴が原因となることも多いようです。

実は感染者数は増加傾向にある

 日本でのレジオネラ菌の感染報告は年々増加傾向にあります。これは検査法の開発・普及に伴う一面もある一方、今後高齢化が加速する日本では感染者数の増加も懸念されます。レジオネラ菌に対するワクチンなどはないため、もし感染した場合には早期発見・早期治療が鍵になります。自宅で行える対策はきちんと行い、レジオネラ菌と無縁でいられるように心がけましょう。

<参考サイト>
・レジオネラ症
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html#Q5
・大浴場の湯 年2回しか交換せず 二日市温泉 大丸別荘が謝罪|NHK 福岡のニュース
https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20230228/5010019398.html
・レジオネラ症の届出状況、2011年第1週~2021年第35週
https://www.niid.go.jp/niid/ja/legionella-m/legionella-idwrs/10791-legionella-20211201.html
・大阪市:レジオネラ症~家庭での予防について~ (…>健康・医療>感染症・病気に関すること)
https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000005669.html
・旅館・公衆浴場等におけるレジオネラ症防止対策についてのホームページ
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/legionella/about.html
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